第4日目。
評論家で明治大学国際日本学部教授の鹿島茂先生と、
芥川賞作家で現在選考委員で早稲田大学文学学術院教授の堀江敏幸先生のお話を伺ってきました。
二人の共通点はフランス文学者であることです。
1階だけで500席ほどのよみうりホールで、
満席とは言わないけれど、ひとつ荷物を置く席を空けて座れていた去年に比べたらかなりの集客で、
聴講者の情熱が伝わってくるほどの熱気もあり、今まさに文学ブームかもしれません。

鹿島茂先生の講演は『パリの島崎藤村』。
フランスへ渡航するに至るきっかけ、姪のこま子との不都合な関係、
大家族の中においてのセクシャリティなど、
その後の作品に反映された藤村の人生を
下宿先であったパリの14区という特殊な地域の環境や、
藤村の交友関係などユーモアを交えながらお話しされました。
鹿島先生は今、書評を1つのサイトにまとめるという活動をされていて、
そのご案内も興味深かったです。
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堀江敏幸先生の講演は『檸檬の置き方について』。
先生が登壇され、そのうちに
「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。」
と始まると、会場内はしんと、しずまりかえって、
聴く者誰もが、梶井基次郎の『檸檬』の世界に幻視者となって入り込んでいくようでした。
ひさびさの先生の朗読に背もたれの存在を忘れてしまい、
ああ、こんなに足先が緊張してた、と席を立つ時に気づいたほど。
佳い文章を、佳いお声で、しかもその世界を深く理解している声には呼吸にすら小説家の魂を感じることができるので至福です。
会場を後にして、
梶井基次郎の檸檬じゃないけど、ここでないどこかに連れて行ってくれる、フランス語で『海』という名前のギャラリーに向かうことになったのも、
不思議な縁かもしれません。
夏の文学教室は、本日8/5(土)が最終日です。