現在、秋〜冬の展覧会に向けての少し大きめの作品にかかっています。

毎日書き上げている小作品は下絵なしですが、

展覧会向けの作品は、少し具体的な構図を作ってから取りかかります。

まず墨美神は原寸におこした下絵をもとに描き始めます。

現在進行中の全紙の場合、墨美神を書き上げるのに、ほぼ2日かかります。

それから絵のイメージを左右する、紙面全体、背景などの構成になっていきます。

例えば墨流し、デコルコマニー、たらし込みなど、様々な技法を使って

作品によって背景を構成していきます。

この処理に下絵はありません。

「だいたいこの位置に墨流しをこのくらいの大きさで入れる」

といった程度のラフで進行します。

墨と水の動くなりゆきに任せて、次にどんな手を打っていくか、

ジャズの即興演奏のように仕上げていきます。

しかし背景の処理は絵の肝であり、

この出来の良し悪しは、作品が完成するか、反故になるか、の分かれ目となります。

まず1枚目で納得いく作品ができることはありません。

2枚、3枚、と同じモチーフに立ち向かっていく、

この繰り返しの中で、やっと納得に近い作品に仕上がっていきます。

筆一本の流れで空気感の変わる水墨画は、

ひとすじの髪の流れを描いただけで一喜一憂があります。

その上で同じモチーフを書き続けるということは

都度、自分の気持ちに決着をつけながら

「前に描いたものよりもっと佳いものを描く!」

と気持ちを立て直すのも、持続するのも厳しく、根気を伴う作業です。

今は3枚目に取りかかっています。

どんなに墨美神を美しく仕上げても、背景の処理で反故になる。

そのリスクを背負って、再びもっとも緊張する背景処理にかかります。

納得に近い作品が降りてきて、みなさまにお披露目できますように。



 

 

〈2017年これからの展覧会〉

 

【第18回きらく会・墨交展】

会期:2017年9/19(火)~9/23(金)

   10:00~18:00(最終日16時まで)

会場:タワーホール船堀

 

 

【第56回 現水展】

会期:2017年10/7(土)~10/14(土)

会場:東京都美術館

 

 

【千代田区文化芸術フェスティバル】

会期:2017年11/8(水)~11/12(日)

   11:00 ~ 19:00(最終日は16:00まで)

会場:九段生涯学習館

 

 

【第50回 全日本水墨画秀作展(掛軸展)】

会期:2017年12/13(水)~12/20(水)

会場:東京都美術館