今日は水墨画の白の表現についてお話しします。
水墨画の白い部分は紙の生の白です。
つまり、失敗は許されないとも考えられますが、
墨の縦横無尽な動きに任せて、つど絵を構成していくるダイナミックな絵画とも言えます。
絵を描く場合、ほとんどの作家がその画面を自分の世界で構成しようとする
つまり画面を牛耳ろうとする力が生まれます。
そのため、ぐったり疲れてしまうような展覧会を振り返ると、
ひとつひとつの作品の主張が強すぎて結界を多く生んでいることが原因のひとつにあるように感じます。
その点、水墨画は、水を含ませた墨の動きのなりゆきに任せて構成していく柔軟性があり、
ほとんどの作品に空気が抜けていく余白があります。
その白の空間は、和紙の生の白で、結界を作ることを防いでいます。
何も描かない空間は、すなわち気の流れに通じ、
見ているものに呼吸をする刹那を与えることができる。
と私は信じています。

鳳香の墨美神は、水墨の抽象画のようなダイナミックさはなく
どちらかと言えば、構図を練って、紙面をコントロールする力を働かせてしまう絵ですが、
空気の抜け感は常に大事に考えています。
すべての空間を支配しようとしない、
その考えは日常生活の中でも役立っているように感じます。
今回4点出品している作品でいうと、
【短冊・墨美神】は2点とも下絵がありません。
描きながら、つどなりゆきに任せて構成していった作品です。
【額装F6号・墨美神】の2点は構図も下絵もありますが、
最終的な仕上げである背景処理は、計算できない墨のなりゆきの結果です。
墨流しも、刷毛による墨の大胆な表現も、
すべてのモチーフを完全に書き終えてからの処理になっています。
そのため、納得のいく仕上がりになるまで、
何枚も描いた上での、出展作品となっています。
鳳香の年内の作品販売は、この『真夏の美女図鑑』が最後となっています。
本日10日は14:30頃より17:30頃まで在廊の予定です。
多くの方にご高覧いただければ幸いと存じます。

京橋・銀座一丁目駅すぐ。東京スクエアガーデン目の前。
銀座かわうそ画廊
『真夏の美女図鑑』
7/8(土)~7/14(金)※12日(水)はお休みです。
12:30 ~ 19:00(最終日は16:00まで)