遅ればせながら歌舞伎を初めて鑑賞してきました。
お濠沿いをてくてく歩いて国立劇場へ。

演目は『芦屋道満大内鑑』。
『葛の葉』の通称で知られるものです。
ストーリーは、陰陽師・阿倍保名が、
それと知らずにキツネと婚姻を結ぶという
異類婚礼譚です。
その間に生まれた童子が、のちの安倍晴明。
なるほどあの超人的パワーは狐の血をひいていたからか…
と想像させる物語の設定です。
見どころのひとつは、
役者が「葛の葉姫」と狐の「女房葛の葉」の二役を演じるので、
その早変わりです。
それから、狐ということで、
その霊力を表現するいろいろな仕掛けも登場します。
物語のさいごに、身を引く決心をした狐の「女房葛の葉」が
我が子を抱きながら、障子に一首の歌を書くのですが、
これが下から上へ書いたり、裏返しに書いたり、口にくわたりと、
大きな見せ場になっています。
「曲書き」というらしいです。
義太夫の独特の節回しといい、下座音楽、舞台演出といい
異空間を味わえたいい時間でした。
歌舞伎が初めて上演されたのが慶長8年(1603)。
新しいものを取り入れながら受け継がれてきた、
400年もの歴史をもつエンターテイメントを、
この時代にほぼ同じ様式で味わえるのは、
ある意味奇跡だなと思ったのでした。
これまで食わず嫌いがちだったけど、
残りの人生の中で
いいと言われるものはできるだけたくさん味わってみよう。
と、思っている今日この頃です。
