東京ドーム近くの交差点で
立ち往生している視覚障害者がいた。
どうやら途方にくれているようす。
急いでいたのでいったん駅に向かおうとしたけど
どうしても気になって戻ってきた。
「なにかお困りですか?」
声をかければ、行きたい場所があるが
「この方向でいいでしょうか」
と言う。
だれかに声をかけてもらうのを待っていたのだろうか。
その場でどれほどの時間を費やしてしまったのか。
「逆方向で、背中の方角になりますよ」
と伝えたものの、人通りも多いし、盲導犬を連れていたが
心配になって、道案内することにした。
交差点で
「今、赤信号です」
と早めに伝えたけど、盲導犬は車道ぎりぎりまで彼女を誘導した。
交通量が多く、誰もがはっとする位置に立ち止まったため、
『もう一歩下がった方がいいですよ』
と伝えたかったが
ふたり(視覚障害者と盲導犬)の信頼関係を思うと
差し出がましいことかも、と言えなかった。
目的地は交差点の角にある建物に隣接しているというが
目の前の通り沿いには見当たらず
「この通りにはないですね。今渡ってきた通り沿いかも」
と言ったものの、
彼女に道のイメージが伝わっているか不安になった。
さらに目的地まで送り届けることができるか少し心配になった。
その瞬間、案内板が目にとまり、
「案内板を見てくるので、待っててください」
と声をかけると、
言い終わった瞬間に彼女はぴたりとその場に止まった。
『もう一歩こっちに寄ってください』
その一声がまた言えずに、ためらいを抱えたまま案内板に走った。
結局、無事に目的地のエントランスまで送り届けることができたけど、
日常いかに私たちが視覚情報に頼っているかを痛感したと同時に、
その瞬間に、どれだけ相手の心に寄り添うことができるか、
試されているような出来事だった。
さて、今日は赤ちゃんとお母さんたちを招いた
ちょっとした七夕の会にボランティアで参加する。
あいにくの天気。
わざわざ出向いてくれる皆さんの気持ちに
いつもよりもっと寄り添うことができる気がするよ。