すっかり春の陽気になったと思った矢先

北風が駆け抜け、ひとつ季節がもどった宵

第41回 全日本水墨画秀作展の授賞式に出かけた。



今回、無鑑査に推薦されたため

多くの人からお祝いの言葉をいただいた。

自分としては未熟に思う部分が多々あるので、

恐縮至極であった。



同じく無鑑査推薦となった宗匠の描かれる人物は

息づかいまで聞こえてきそうなほど大胆な筆づかいで力強い。

自分に足りないものがその中にはある。

無いものには焦がれる。

そんな話の中で、

「わたくしには、あなたのような絵は描けない。

 自分には足りないと思うものに無理に手を伸ばすのでなく

 今ある持ち味を深めるのがよろしいのでは」

と、ご教示いただいた。



庭園の闇を照らす篝火をしばし見つめ、会場を後にした。

外の空気はふたたび春が満ちて温かだった。

肌に馴染む風につつまれながらも心の奥では、

木立を揺さぶり、窓を軋ませる虎落笛が

長く短く、高く低く、いつまでも轟いていた。




『第41回 全日本水墨画秀作展』
〈入場無料〉

会場:国立新美術館(乃木坂駅直結)
会期:2013.3.6(水)~3.17(日)10:00~18:00(火曜日休館)