「作品を見ただけでどれがあなたのか分かりますよ」

と、最近よく言われるようになった。

デザインには長いこと携わってきたが、

こと『水墨画』に関しては、

「なに」を描くか、「どう」表現してくか、悩んでいた。

「どう表現するか」にかけては、

技術も経験も足りないので、少しずつ補っていこうと諦めがついた。

が、「なにを描くか」は決められる。

試行錯誤の末、いちばん心地よく筆が進むのが女性像だと気付いた。

というワケで、とにかく女性を書き続けた。

ただきれいな女性を描くだけじゃ面白くないので、

異質なものを組み合わせて、夢のような空間を表現するようにした。

日本画や水墨画で表現されやすいのは、

「花に蝶」といった「キレイ×キレイ」な組み合わせだ。

しかし本来「花」の可憐さや、強い存在感を表現するには、

異質なもの、例えば蜥蜴なんかを組み合わせた方が際立つ。

闇を際立たせるには光が必要なのと同じで、

やわらかな皮膚には有刺鉄線がからみ、

ゆれるような睫毛の際には蜂が飛んでいる。

そのくらい極端な方がモチーフが際立っておもしろい。

「毎回、こんどは何を描かれているのか楽しみにしているんですよ」

と、言われるたび、俄然やる気になって挑戦し続けている。

今年はまたひとつ展覧会が増える予定だ。