風は強いけど、すこし暖かかったので、
抜けるような青空の下、有楽町から新橋まで歩いた。
東京は網の目に電車が走っているので
ひと駅なんてあっと言う間。
だから大抵の場合ひと駅ふた駅はすぐ歩いてしまう。
しかし、この区間はすこし距離がある。
散歩にはちょうどいい距離かもしれないが
JR高架沿いの、味(飲食店)はあるけど、素っ気ない通りを歩く。
と言っても、山手線の赤煉瓦造りのアーチの高架だから
歴史を道連れに歩くなら、味わい深い。
煉瓦のアーチ橋は新橋から東京まで3キロもの距離に及ぶ。
完成は明治40年(1907年)というから、
たいそうな歴史的建造物だ。
戦火も、関東大震災もくぐり抜けて、今なお現役で
数分おきに走るJRの大動脈を支えている。
晴海通り、外濠通りのふたつの大通りを抜けると
有名なSL広場に出る。そして烏森。
烏森。その名の由来は、名から想像したのとは少し違っていた。
当時その界隈は江戸湾の砂浜で松林であり、
『空州の森』『枯州の森』と呼ばれていたらしい。
今は都会の人溜りとなった空州の森で
用事を済ませて先を急いでいると、
『烏森神社』の表示にぶつかった。
新橋のただ中にある神社とはどんなものだろう。
と、興味から足をのばした。
飲食店が立ち並ぶ参道の奥に、烏森神社はあった。
これも何かの縁と
ひと駅分の電車賃程度の賽銭を投げ入れ、
帰りはまた歩くことにした。
さて、どちらへ行かう風がふく (種田山頭火)