社会人になりたての頃、

「おまえ、正論ばかりでおもしろくね~んだよ」

「冗談のひとつでも言ってみろ」

ってよく言われたなぁ~と、ふと思い出した。



なぜ思い出したかって?

人からの誘いをばさっと断るのは分かりやすいけど、

大人なら、ましてや日本人なら、

心をくじかない上手な会話を知っているはずだ。

と、ふと思ったからだ。



ずっと前の話だが、

今も昔も頭が上がらないカメラマンの先生と飲みに行った。

こっちはぺーぺーで、会話についていくのが必死なころだ。

緊張でぎろぎろしてると、飲み屋のママが

「お腹すいてない?つまめるのあるけど、いかが?」

と、私に声をかけてきた。

そこの勘定は誰が持つのかは知らないが、

こういう場はとにかく遠慮するに限ると思い、

「いやいや…けっこうですから」

と、断るとカメラマンの先生が

「おまえ、バカっ。せっかくここのママがどうぞって言ってんだから、断るんじゃねーよ。

 そういう時は、ありがたくいただきますって言うんだ」

と、叱られてしまった。



なるほど。そんなものなのか。と、その時はその程度だったが

思えばそれは、ひとつの思いやりなんだ。

二の句も継げないような味も素っ気もない応対をするな、

思いやりに気付いてやれ、という事なんだ。

つまり、余裕があるんだ。

粋なオトナだなぁ。と、今さらながら感慨深く思い返した。



昨今こういう粋なオトナに出会わなくなったなぁ。と

ふとね。さみしく思った流星群の夜でした。