真っ白な空間に墨をふくませた筆を滑らせる。
きれいに仕上げたってしようがないのは分かっているのに
突き詰めるほどに隙のない構成になっていく。
ある程度の計算は自分らしさで片付けられるが
聞き分けのいい墨の線はイロケも素っ気もなくなる。
水墨は滲んでいく、なりゆきに任せるという醍醐味がある。
楮の繊維のすき間を縦横無尽に滲んでいく墨の細かい粒子を
ねじ伏せて手なずける事はできないから。
墨のカオスを楽しみながら進めていかなくてはいけない。
ライブのようだな、と思う。
授業ともいえるのだろうか。
対象があって、相手の顔を見ながら次の手を考えながら進めていく。
描いている時は、ひたすら無心に
次々舞い込んでくる偶然を構成していく、という余裕が必要なんだ。
ゆらゆらと漂う人生のようでも、ある。