「代わりはいくらでもいる」

それはつまり、

「だからこそ、誰にも真似できないほど必死にやれ」

という意味だったのだろうが、

そんなキツい言葉で育てられたせいだろうか、

逆に仕事に対してクールに対応してしまうクセがついた。

与えられた仕事は責任もって成し遂げるが、

心の奥底で、

「わたしじゃなくてもいいだろう」

「もっといい仕事をする人は山ほどいるだろう」

と、自らの可能性に制限をつけてしまうので、

求められる以上のものを追う事を無理にしなくなった。

人生の限界が見えてきた今は、当時に比べれば少しの欲がでてきたが、

どうぞお先に。と、道を譲ってしまうクセは抜けない……。



ただ人を受入れるのは巧くなった。

「世の中には優れた人がたくさんいる」という考えが基本なので、

いろんな提案を理解して組み込んでいこうとする力がついた。

そして気付いたら、

様々な活動の場で人をまとめる立場を求められる事が多くなった。

舵きりを任されるのはありがたい話だと思うが、

私にできる事は、これまで通り地道に、これまでより少し気を引き締めて

未来を見据えて、今できることを為すだけだ。



箔なんて要らない。

ましてや金に似せた色なんて要らない。

人生を無闇に輝かせる必要はないから。

ただ青でいい。

闇を浮かび上がらせる、光を引き立たせる青でいい。

きっと、どんな人生も

未来はかけがえのない黄金色に輝きはじめるから。