『ちっぽけな土地にひっそりと息づいているものほど愛しい。

 逆に愛しいものほど狭いところで物音ひとつ立てずに生きている…』



クマガイモリカズ・画家。

「わずか15坪の庭にすべてがあった」

と語り、生涯、家の敷地から出ることがなかったそうだ。

日常をモチーフに創造は果てなく広がったのだろう。

極貧の中、病院へ行くこともままならず幼い息子を亡くした。

モリカズは一晩中、亡骸に寄り添い黙々と息子を描き続けたという。

さらに数年後、結核で娘をも亡くしたが、

やはりモリカズは筆を動かしていたという。

いわゆる変わり者だったのかもしれない。

しかし例えばどれほど地の彼方へ旅に身を委ねようと、

人生とは、クマガイモリカズのいうそれが

全てであるのかもしれないな、とも思う。



『なるべく目だたないようにそっと生きてきた。

 何げない身の回りをじっと見つめて、描きたいときだけ描いた』

(熊谷守一美術館HP/守一のことより)

とあった。



手に余れば、立ち止まればいい。

「わずか15坪の庭にすべてがあった」

というクマガイモリカズのように、

大切なものは案外手の届く範囲にしかないのだから。



熊谷守一美術館
http://kumagai-morikazu.jp/