窓から差し込む光の眩しさに

テラスへ出た。

背中にあたる陽射しが暖かで

ひと季節放っておいたゼラニウムに手をのばした。

枯葉や枯れ枝を丁寧に取りのぞき

遅ればせながら春の準備をしてやる。

高所恐怖症だからというのは言い訳で、

冬の間はほんの数メートル先に出るのが億劫だったのだ。



ゼラニウムといっても鮮やかな花のそれでなく

主に葉ばかりのフウロソウ科のPelargonium graveolensだ。

摘むたびローズと同じ成分であるゲラニオールが香る。

花屋の店先にある手入れの行き届いたものは

道すがら人を惹き付けるほどの芳香がするが

葉も伸び放題、すっかり野生化したこれは、

少し香りも変化してしまったようだ。

リナロールやシトロネロールの

すっきりとした香りの成分が不足している気がする。

さっと香るトップノートは人の嗅覚を一瞬で惹き付けるものだから…。



そうしているうちに凝り固まった思考も少しほぐれてきた。

すこし頭が重い気がするのは、

単なる休日の寝過ぎのせいかもしれないが、

今さら風邪をひいては惜しいと

ラベンダーとティートリーのルームスプレーを作り

乾燥した部屋に振りまく。

肺胞にまで届く粒子のこまかい香り。

隅々の細胞たちに目覚めろ!と、深く吸い込む。

さあ、今日は新しい精油でも買いにでかけよう。