今日が最終日の先生方の展覧会に足を運んだ。

銀座8丁目。

指先がきんと冷えるが、いつ来ても銀座は賑やかだ。



大通りの喧噪をぬけ裏路地を歩く。

一部メディアで紹介されてしまったが、

銀座で買い物をするようなヒールにファーコートなど着た人が

裏路地を楽しんで歩く事はまずない。



ご~っとエアコンの室外機が放つ騒音、熱気、臭気。

眉間に皺を寄せ鼻をゆがめながらビルの狭間を突き進んでいく。

ちょっとした探検気分だ。

休憩中の料理人に出くわせば軽く会釈する。



路地は途中カフェの店内を通り抜けする。

脇の扉から突然現れた侵入者に近くの席の人は、

はっとした表情を浮かべる。

これもご愛嬌のひとつ。

挨拶のひとつ交わしたっていいじゃないか。



『珈琲の香にむせびつつものがたる わが恋がたり聴くひともなし』(吉井勇)



展覧会はことしの干支にちなんだ縁起物だ。

幸福を拾った気分で、帰りはみゆき通りに出る。

つたの絡まる校舎は泰明小学校。

まっすぐ行けば日比谷だが高架下をぬけ有楽町へと向かう。



大型バスの行き交う晴海通り。

向かいに有楽町マリオン。

撤退をしたという西武百貨店の前もいつもの人の流れ。



無くなってしまえば、そこに何があったか思い出せなくなる。

人ってのは、あんがい薄情なものだ。



『悲しみぬ恋すべからざる人を恋い 在りける我と思い知る時』(吉井勇)



夕暮れ、銀座にぽつりぽつりと灯がともりはじめる。

ひそやかなる愉しみを与えてくれるジャズライブハウスの

小さな看板に魂を揺さぶられる。



からり。

薄暗がりの中。

ウィスキーのグラスを滑る氷の音が聴こえた気がした。