ロベルト・バッジョがユベントスで100ゴール目を決めた試合後
「将軍プラティニに並びましたね」とインタビュアーに言われこう応えたらしい。
「あの頃とはスピードもプレスも比較にならない。ゴールの価値が違う。」
毎年テレビでTOYOTA CUPが中継される度にプラティニの「幻のゴール」の映像が流されることに辟易としていた。何故か毎年コメンテーターとして呼ばれるそのベテランお笑い芸人がその映像を見ながら毎年同じように歓喜している様を見る度にこれこそが日本のサッカーの進化の妨げだと思っていた。
その「幻のゴール」は今や何も凄くない。その辺の公園で子供達でもやっていることだ。
ただの個人の思い出、今風に言うならば「あなたの感想」ということだろう。
かくいう私もJUVENTUSと言えばバッジョ、もしくはデル・ピエーロくらいで時代が止ってしまっている。
いまだにVOLVOが世界で一番頑丈な自動車だと信じているジジイのことを笑ってられないのだ。しかし、一体誰がそんなことを言い始めたのであろうか。そんな事実が存在した過去は無い。
先日身内に頼まれてW204の4気筒を仕入れた。
事前にリサーチした結果トラブルの事例も出尽くした感があり、
予防整備をしておけば大丈夫だろうということと、722.9いわゆる7GTRONICなるトランスミッションの可能性を探りたいというスケベ心もあったためそれを選んだ。
普段古いモノしか診ていないので新しいモノに積極的に触れようとするものの、
中々そういう機会に恵まれることもないのである。
それこそJUVENTUSの話ではないが、私にとってはW210ですら新しい自動車である。
数年前から、散々バカにしていたW210をあることがきっかけでゲタに使うようになった。
巷で聞いたような悪評を流布していたのは一体どこのバカなのか、
何故にそんな風評がまかり通っていたのか全く理解できなかった。
結果今でもゲタに使い、何の不満も無い。
気付けば今まででゲタに使った車の所有期間のレコードブレーカーになった。
今回の2012年製のW204、私にとっては新しすぎる車だ。
インテリアには見慣れないスイッチ等が並び、ディスプレイがビルトインされている。
こういう「in car entertainment」には何の興味も無い。
更に乗り味だの機械としての性能だの何だのに全く何の期待もなかったのだが、
乗ってみると少なからず戸惑いを感じた。
速度表示が間違っているのかと訝るくらいに、スルスルとスピードが乗ってくる。
何事もないようにスムーズにドンドンとスピードが乗ってくるのだ。
過給があるというものの、たかが1,800ccしかないそのエンジンが車体をスルスルと引っ張っているのだ。
いやいや、これはエンジンではなくトランスミッションだ。
W210に乗り始めた時に感じたアレだ。エンジンが速いのではなくトランスミッションが速いのだ。
今の自動車はトランスミッションが速いのである。
変速マナーやシフトスピード、そしてスムーズネスは電子制御でないと不可能である。
W210の722.6(電子制御5速)に乗り慣れてからは、それ以前の722.3が搭載された自動車に乗るとかったるくてイライラした。
それ以降、722.3から722.6に換装する作業を積極的にするようになったのは言うまでもない。
このW204、普段のゲタに使うに何の不満があろうことかと思うものの、しかしこの先何十年も相棒として乗り続けることがあるのかと言えばそれはまず無いだろうと思う。
そこはかとなく張り巡らされたネットワークや電子部品が音を上げて補修部品の供給も終了するであろう。
誰が初代imacを直して使うのだ。
この車はあくまで「家電」と同義語の「ゲタ車」の範疇であろう。
話をトランスミッションに戻す。
7速のオートマティックトランスミッションはスピードが然程上がらずともドンドン上のギアにシフトアップする。
燃費の為なのか、普通に走っていると2.000rpmにさえ達しない。
近年のエンジン内部がカーボンだのデポジットだので汚れが堆積する理由が分かった。
エンジンの回転を上げてそれらを吹き飛ばすような機会が極端に少なくなっているのだろう。街中のストップ&ゴーが多い環境ではそれがさらに助長される。
ババ・・もといご婦人の買い物車ならば尚のこと酷い状態が想像される。
たまには郊外に出てギアを固定して回転を上げ、内部を浄化する作業が必要であろう。
新しい車(と言っても10年前のもの)に乗るともちろん何か新鮮な発見がある。
テクノロジーの進化は素晴らしい。
しかし、進化する度に何かを失っている感があるのも事実である。
それを多くの人が感じているのか、自動車に限らず人々が古いものに価値を見出している今日この頃である。
価格はドンドン上昇し、そもそもモノとして然したる価値が無いものまでドサクサで評価されている状況である。
私を含む庶民には手が届かなくなったことを嘆くつもりはない。
機械を動態保存し、本来のパフォーマンスを維持するためには大きなコストが掛かる。
そのコストを惜しみなく費やせる方こそがそれのオーナーに相応しい。
今巷に溢れる「古い車」はコストを掛けられなかった過去のオーナー達にネグレクトされた成れの果てである。
また、それらをちゃんと診ることが出来なかったメカニックにも一端があるだろう。
コストを掛けられる新しいオーナーに巡り合えた自動車たちが、自動車として機械として本来のパフォーマンス、
またはそれ以上のモノを発揮してオーナーと共に元気よく走れるようになるお手伝いができれば幸いである。
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