米大リーグ、ヤンキースのイチロー外野手(39)が28日、松井の引退に「ただただ寂しい」と心境を明かした。
1学年下の松井とは高校時代から交流。日本を代表する打者として、大リーグでもしのぎを削った。松井が7年間所属したヤ軍に今季途中から移籍したイチローは、松井が背負った伝統球団の重みを痛感しながら、来季も現役を続ける。
海を越えて球道をきわめるスター同士にしか分からない、さまざまな思いが去来したのか。電話取材に応じたイチローは、松井の引退に、感傷的な言葉を絞り出した。
「中学生の時から存在を知る唯一のプロ野球選手がユニホームを脱ぐことが、ただただ寂しい」
中学時代から松井の名前は知っていた。愛工大名電高2年だった1990年、イチローと星稜高1年の松井は遠征で初めて対面した。イチローの合宿所の部屋を松井が訪ねたこともあった。
同じ左打ちの外野手ながら、プロ入りは対照的だった。ドラフト1位で巨人に入団した松井に対し、イチローはオリックスの4位指名。しかし天才イチローとゴジラ松井は、ともに日本を代表する打者に成長した。
96年の日本シリーズが、唯一の頂上決戦。対談などで互いの野球観に触れ、イチローは「まったく僕と違う思考でとても興味深かった」と回想した。
イチローは今季途中から、松井が7年間所属したヤンキースに移籍。勝利至上主義の名門球団と、来季から新たに2年契約を結んだ。「あらためて松井選手が残してきた実績がいかに重く、難しいことであったかを知った」
この20年間の野球界を引っ張り、トップの座を分け合ってきた松井は、先にバットを置いた。孤高の存在となったイチローは、戦いを続ける。