これぞ千両役者の引退の花道だろう。ソフトバンクの小久保が09年8月13日以来の2打席連続弾をかっ飛ばした。ヤフードームでは今季初の本塁打。「フリー打撃でも入らないのに2本も打つなんて……。野球の神様の存在を感じる」。「飛距離が出なくなった」という引退理由がかすむほどだ。
打席に立つだけで万雷の拍手。ポストシーズンを除けば、本拠地ではこの日を含めて残り2試合。見納めが近いことはファンも分かっている。
めったにガッツポーズをしない小久保が両手を掲げたのは、1点を追う三回2死一塁の逆転2ランだ。日本ハム・中村の抜けた直球を豪快に引っ張った。「切れるな」と念じた飛球は左翼ポールに当たった。「もう本塁打は打てないと思っていた。最後かもしれないのでうれしい」
しかし、感慨に浸る時間はなかった。打った本人すら「ありえへん」と絶句する“続編”が待っていた。五回2死一塁。左中間に飛び込む4号2ランは、全盛期をほうふつさせる放物線を描いた。攻撃終了後、2度目の「カーテンコール」を浴びると、「ありがとうという言葉しか浮かばない」と胸を詰まらせた。