(セ・リーグ、DeNA0-2広島、1回戦、広島1勝、6日、横浜)
広島・前田健太投手(23)が6日、DeNA1回戦(横浜)で無安打無得点試合を成し遂げた
。山本昌(中日)以来6年ぶり、史上74人目(85度目)となる快挙だ。2四球だけの、完璧な122球で新球団のDeNA打線を抑え込んだ。
楽天・田中、日本ハム・斎藤ら同世代のライバルよりも早く、入団6年目で偉業を達成した。
少し天を見上げ、息をついた。梶谷を投ゴロに打ち取り、27個目のアウトを自らさばくと、力強く両拳を突き上げた。まるで優勝したように、ナインがマウンドへ走る。
前田健がノーヒットノーラン達成だ。
「人生で初めて。今までにない緊張感がありました。真っすぐが低めに集まっていた。その分、スライダーとチェンジアップが生きた」
一回に150キロを計測して威圧感を見せつけると、中盤からは変化球で翻弄。
許した走者は四球の2人だけ。圧巻の122球で、史上74人目の大記録が生まれた。
「ヤクルト戦が何度も頭をよぎりました。二死からはビクビクして投げていました」
シーズン最終戦だった昨年10月25日の神宮では九回一死で夢破れ、しかも逆転サヨナラ負けを食らった。
沢村賞翌年の苦い1年を経て、最高の今季初白星だ。
「支えてもらっている奥さんに伝えたい。いままでは、勝ったときに一緒に喜んでくれる人がいなかったから。ウイニングボールは家に飾っておきたい」
元日にフリーアナウンサーの成嶋早穂さん(26)と結婚。このオフは肉体強化に取り組んだ。
夫人のサポートもあって食生活と真剣に向き合った。
初めて取り組んだウエートトレともリンク。今季は登板3日前から炭水化物とビタミンB1を多めに摂ってパワーをつけている。
「ご飯って炭水化物?」。そんなマエケンが変わった。
早穂さんも深夜にブログを更新。「昨年の最終戦。あと一歩のところで達成出来ず、2人で泣きました。でもそこから2人で約束した夢が、今日1つ叶いました」とつづり、「主人に、『昨日の夜、横浜に向かう前に、さほの料理を食べたからだよ』と言ってもらえて私もHAPPYです♪」とのろけた。
新居から広島駅までは数分。遠征には徒歩で出かける。
ファンに声をかけられながら歩く。逃げないのは広島を背負う自覚があるから。1999年の佐々岡真司以来、鯉投4人目の偉業で証明した。
「佐々岡さんから受け継いだ背番号18。18といえば、やっぱりエースナンバーだから、恥じない投球をしたい」
楽天・田中、日本ハム・斎藤らと同世代だが、先陣を切って2010年に沢村賞を獲得。
昨季の試練を経て、マエケンが球界のエースに成長した証を見せつけた。
★母・幸代さん涙
前田健の両親は大阪の自宅でテレビ観戦。息子のノーヒットノーランを見届けた。昨年10月25日のヤクルト戦(神宮)ではあと2人のところで快挙を逃していたとあって、母・幸代さん(47)は「『ついにやったな』という感じ。最後は昨年と同じにならないように願っていました」と涙声。父・治茂さん(48)も「みんなの力のおかげやね。九回でも149キロ出ていたし、調子よかったんじゃないかな」と声を弾ませた。