顛と"うのブログ

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闇を恐れたり嫌ったりする必要はありません。
闇も私達の一部です。2019年の11月25日で
これまでの世界史が終わりした。2020年から
世界はどんどん変わってゆきます

 

eyecatch

2025年12月19日 欧州市場の朝の時間帯に、金と銀の価格が同じ流れの中で、史上最高値へ到達しました。 金は1トロイオンスあたり4300ドル台。 銀は66ドル台。 いずれも、これまで市場が経験してきた水準を大きく超えています。


金は時間をかけて上昇してきました。 下落局面を挟みながらも、高値を切り上げ続けてきた結果です。

一方の銀はある段階から動きが変わりました。 価格は急に軽くなり、短期間で水準を引き上げていきました。

上昇の仕方は異なります。 しかし、行き着いた先は同じでした。 同時の史上最高値更新。 この重なりは偶然とは言えません。

過去を見れば、金と銀は必ずしも同じ方向に動いてきたわけではありません。 どちらか一方が注目を集め、もう一方は置き去りにされる。 そうした場面の方が遥かに多く存在します。

それにも関わらず、この日は違いました。 2つの貴金属がほぼ同じ時間帯に、過去の上限を突き抜けました。 市場の雰囲気は華やかなものではありません。 価格上昇を祝う空気も、熱狂もありません。

あるのは、動きの意味を測りかねているような、張り詰めた静けさです。 価格は確かに上がっています。 しかし、その理由が一言で説明できない。 その違和感が市場全体を包み込んでいました。

金と銀は単なる資産ではありません。 通貨や金融の仕組みが揺らぐ局面で、人々が繰り返し向き合ってきた存在です。 その2つが同時に過去にない水準に達した。 この出来事は、相場の成功を示すものではありません。 むしろ、市場の深部で起きている異変を静かに映し出しています。

2025年12月19日の朝。 金と銀は言葉を発することなく、同じ警告を発していました。

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数字が語る歪み 縦玉と価格が一致しない市場

価格の動きだけを見ていると、金も銀も勢い良く買われているように見えます。 しかし、市場の内部に目を向けると、全く違う景色が広がっています。

その手がかりとなるのが、未決済建玉です。

未決済建玉とは、決済されずに残っている先物取引の枚数のことです。 市場にどれだけ多くの参加者が関わっているかを示す、重要な数字です。 まず、

金です。 価格が上昇すると同時に、未決済建玉も増えています。 これは新しい買いと売りが市場に入り続けていることを意味します。

投機とヘッジが混在しながら、金の市場は比較的秩序を保ったまま拡大しています。 価格と取引量が同じ方向に進んでいる状態です

 

一方、銀は全く違います。 価格は史上最高値圏にありますが、未決済建玉はほとんど増えていません。

 

市場に新しい参加者が入ってきていないのです。 本来であれば、価格がこれだけ動けば、陶器的な取引が一気に増えます。

 

しかし、銀の市場ではその熱狂が見られません。 静まり返ったまま、価格だけが上昇しています。

 

特に注目されるのが、先物取引の中心である、COMEXでの動きです。 銀の未決済建玉は、過去の価格水準と比べても低いまま推移しています。 これは非常に不自然な状態です。 価格は上がっている。 しかし、市場は活発に動いていない。 取引が盛り上がっていないにも関わらず、価格だけが押し上げられている。 この矛盾は、通常の需給では説明できません

 

金は人が集まり、取引が増価格が上がっています。 銀は人が集まらないまま、価格だけが上がっています

同じ貴金属でありながら、市場の構造は正反対です。 この歪みは、単なる相場の癖ではありません。 数字が示しているのは、銀の市場で何かが欠け始めている、という現実です。 価格は動いている。 しかし、市場は動いていない。 この異常な状態が、次の局面へと繋がっていきます

2  銀だけが抱える、物理的現実 流動性が消えた市場

銀の市場で起きている異常は、数字だけでは説明できません。 問題はもっと単純で、もっと深刻です。 銀そのものが市場に存在していません

金には一定の現物流動性があります。 必要とあらば、倉庫から現物が動き、市場に供給されます。 しかし、銀は違います

。 今、市場が求めている量の銀が、物理的に足りていません。 この不足は、空売りを行う側を直撃しています。 本来、空売りは後で現物を調達して引き渡すことで完結します。

ところが今、銀はその現物が手に入りません。 調達できない理由は明確です。 銀の在庫が枯渇し、売りにでてこないからです。

 

更に、金融機関が使える信用枠も、限界に近づいています。 これ以上、売りを積み上げる余地がありません。 この緊張は、ロンドン市場の数字にも現れています。

銀のリースレートは約7%という高い水準に達しています。 これは銀を借りたい人が多く、貸し手が極端に少ないことを示しています

。 先物市場でも異変は進んでいます。 将来の価格より、目先の価格の方が高くなる状態。 いわゆる逆ザヤに、銀は近づいています。 今すぐ欲しい。 しかし、手に入らない。 その焦りが価格に反映されています。 結果として、銀の市場は特殊な形に変わりつつあります。 売りが消買注文だけが並ぶ市場です。

入札はあっても、応じる売り手が居ません。 価格は上がっています。 しかし、それは取引が活発だからではありません。 現物が存在しないという、物理的な制約が価格を押し上げています

。 銀は今、金融商品としてではなく、そこにあるか、ないかという現実そのもので取引されています。 この状況が、市場の緊張をさらに強めています。 3 アジアで起きている静かな圧力 見えない買い手たち 銀の価格を押し上げている力は、欧米の市場だけに存在しているわけではありません。 むしろ、静かに影響力を強めているのが、アジアの時間帯です。 実際、銀の価格はアジア市場が開いている時間に上昇しやすい傾向を示しています。 欧米市場が落ち着いている間に、価格が一段切り上がる。 この動きが繰り返し確認されています。 その背景には、表に出にくい買い手の存在があります。 陶器ではなく、現物を求める人たちです。 シンガポールなどの都市では、銀の現物を求める小売客が店先に列を作っています。 短期の値上がりを狙う動きではありません。 将来に備えて、手元に実物置こうとする行動です。 静かですが、確実な需要です。 この流れにもう1つの要因が重なります。 中国です。 中国は新年から新たな制度を導入し、銀の現物輸出を制限する方向へ動いています。 これにより、世界市場に回る銀の量は更に減ります。 供給が細る一方で、需要は減っていません。 むしろ増えています。 銀は工業用金属でもあります。 電気式や太陽光パネルなど、産業用途で継続的に消費されています。 この産業需要に、アジアの貯蓄目的の買いが重なっています。 使われる銀と蓄えられる銀。 双方 が同時に市場から消えていく構図です。 この圧力は大きな音を立てません。 ニュースにもなりにくい。 しかし、現物を確実に締め上げています。 価格は、声を上げない買いによって押し上げられています。 アジアで進んでいるのは、熱狂ではなく、沈黙の積み重ねです。 その積み重ねが、世界の銀市場を内側から変えています。


問われているのは相場ではない。
ここまでの動きを見て、金は強気相場に入ったのかという問いが浮かびます。
しかし、この問いは確信から少し外れています。

問題は金や銀がどこまで上がるかではありません。本当に問われているのは通貨の価値がどれだけ下がったのかという点です。

 

金との交換比率で見ると、主要通貨の価値は21世紀に入って大きく低下しました。
2000年の100円は現在約4.7円、100ドルは約6.95ドル、100ポンドは約5.6ポンド、100ユーロは約7.95ユーロにしかありません。
数字を並べると、通貨の変化は一目瞭然です。

 


重要なのはこの下落が止まっていないことです。
むしろ速度を上げています。

通貨は静かに、しかしかつ確実に力を失っています。
それにも関わらず、中央銀行の見通しは楽観的です。
インフレは落ち着く。数年後には安定する。
こうした予測は何度も繰り返されてきました。
連邦準備制度理事会やイングランド銀行は物価投資を語る際、マネーサプライを主要な要因として扱っていません。
しかし、通貨の価値は供給量と信用によって左右されます。
金はその仕組みの外にあります。
誰かの信用ではなく、物として存在しています。
だからこそ、

通貨の価値が揺らぐ局面で、金の価格は上がります。
今起きているのは、貴金属の高騰ではありません。
通貨の価値が下がった結果が価格として現れているだけです。


市場はインフレが一時的なものだとは見ていません。
むしろ長期化する前提で動いています。
その動きが金と銀の価格に反映されています。
貴金属は未来を予測しているわけではありません。
現在の通貨の状態を正確に写しているだけです。
静かに淡々と。
それが金と銀が示している現実です。