なんだか、アメブロのほうが閲覧率高い気がしたので、

軌道に乗るまで、こちらにもどうじうpしてみることにしました。

なので作者は私ではありません。BLでもありません(^人^)






ヘタリア二次創作 菊&アルフレッド
byまさき


Before WWⅡ





「我ら“持たざる国“は」 と菊は口を開いた。

 幼く見える外見には似つかわしくない、低く落ち着いた彼の声に思わずアルフレッドは聞き

入ってしまっていた。


「『喧嘩』による略奪しか、最早手だてはありません。

 あなた方が散々やってきたことを、私たちがやって何が悪いというのです。

 “持たざる国“が“持てる国“になろうと足掻くことの何が悪いというのですか」


「……君は自分のために中/国たちを食い潰すのかい?」


「言ったでしょう、あなた方も散々やってきたことです」


 菊を責めるように言うと、彼は奇妙に静かな瞳でアルフレッドを見た。

 先ほどまでの彼にしては珍しい激情は、奥底に隠されてしまったようだった。


「俺たちに勝てると思っているのか」


「いいえ」

 
意を決して重ねた言葉に、しかし菊は常のような淡々とした口調で悲劇的観測を述べた。


「私たちとあなた方の国力の差は歴然としています。

 ……まあ、国民のみなさんがどう思っているかは知りませんが」


 仮面のように一切の表情を廃した菊は、国民のことに触れた時だけ目を伏せた。


 仮面――菊の家で言う能面のことだ――は、観客に向ける角度によって同じものなのに

様々な表情を作りだすという。


 アルフレッドは菊が前にやってみせてくれた、その無表情な仮面の悲哀を思い出した。


 今、アルフレッドの目の前にいる菊と同じ表情だった。


 文化が国に息づくのか、国が文化を育てるのか。


 鶏か卵か、メビウスの帯を辿り続ける。


 知らず、自分が息を止めていたことに気づいてアルフレッドはゆっくりと空気を吸った。

 透明な塊を飲んだように気管がつかえる。


 何も言いたくない気がする。

 アルフレッドは自分が正義であることを知っていたが、菊の立場もまた、

ある側面においては認めざるを得ないのだった。


 植民/地の獲得。

 過去の自分がどうしてあんなにも無邪気に地図に線を引くことが出来たのかがわからない。


 凝った空気を吸って吐くと、黙ったままでいるのは外/交には不利だとアルフレッドは

漸く思い出した。


 さり気無く、いつもどおりに。

 自分は興味の無いことには冷淡で、心底無関心だと見せかけろ。

 自分に言い聞かせて、アルフレッドは何とか言葉を次いだ。


「ふうん」



「アルフレッドさんはわからなくていいですよ」



「そっか」


 冬はいけない。


 窓の外も部屋のなかも、何処も彼処も灰色に見える。

 冬の早朝の静けさが素晴らしいだなんて全く思えない。寒くて暗いだけだ。

 以前の彼の言葉をアルフレッドは心の中で断じた。



 ふと窓の外に視線を向けた自分を、菊はいつもと同じように感情を読ませない顔で見つ

めている。


 前なら分からなかったが、今回ばかりは推測できる。




『お前のせいだ』




 菊はそう思っているに違いない。


 彼が冷えきった瞳で自分を見据える姿が脳裏に描かれた。その視線は嘗て、彼の兄や

北の大国に向けられたものだった。


 アルフレッドは急にネクタイが苦しくなった。

 着慣れていないのだ。

 そう漏らせば必ず説教を始める奴と何故か脱ぎ始める奴の五月蝿い二人組を思い出して、

こっそり苦笑した。


 今、あの二人はこの場にいない。


 アルフレッドの手元の書類入れには、上司から預かった交渉案の書面が納められていた。


 きっとこの案を言えば、彼は黙ってしまうだろう。


 或いは首を振るのだろう。


 それでも。


 アルフレッドは、自分が正しいことを信じて書類入れから文書を出した。


「菊、これを」


「日/米/交/渉の妥協案ですか」


「そうだよ。君さえこれに頷いてくれればそれでいい。そうしたら皆が笑顔になれる」


「……そうですか」


 卓上に置くと、菊は手にとってざっと目を通す。

 彼は、英語を話すことこそ不得手だが、読むことならばある程度得意だった。

 残念ながら眉毛野郎の英語のほうが主流らしいが。


「どうだい」


「私の一存では何とも」


 でも考えてみましょう、と菊は呟いて手中の文書を書類入れにしまった。


 アルフレッドは菊が受け取ったことで嬉しくなった。

 受け取ったからには、彼は最後にはきっとアルフレッドの頼みを聞いてくれる。


 菊と菊の上司の体面のために丸呑みということは無いだろうが、交渉が前向きになる可能性

が高まった。


 今でこそ菊は不正義の側に立っているが、もともとはアルフレッドが引きこもり状態から

引っ張り出して世界を教えたのだ。

 心の中ではアルフレッドを友達だと思っている筈だ。




「他に何か伝言等はありますか」


「いや、ないよ。今日はこの書類だけだ」


「わかりました」


「じゃあね、菊。返事を楽しみにしているよ」


「私もこれで失礼します」




「アルフレッドさん」



「ん、なんだい?」






「お体に気をつけてくださいね」





「うん。ありがとう、菊」



 








そして、その二週間後に炎の上がる真/珠/湾の報が伝えられるまで、アルフレッドはすっ

かり菊を信じこんでいたのだった。




愚かにも。




                    Thanks.