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キャリア目覚ましい優秀な言語学教授アリス。しかし、これからの彼女の人生を奪うかのように、病に襲われる。それはこれまでの記憶を失っていく、若年性アルツハイマー症であった…。

記憶、言葉を剥ぎ取られていく恐怖、苦しみ。とりわけ“言語学者”として、知性によって自らを規定してきた主人公にとって、この事象は耐え難いものだ。ジュリアン・ムーアが、この難しい役に体当たりで入りこんだ。アリスが徐々に、かつ確実に病に侵されていく過程を、静かに、同時に熱く演じている。

家族との関わりも変化していく。妻、母の悲劇に突然襲われた夫、子どもたち。大切な人が変わっていくことを苦しみながら、しかしその現実を受け入れざるを得ない。そして彼らはそれを受け入れていく。

特に夫役のアレック・ボールドウィンが好演。かつてこの人は『レッドオクトーバーを追え』あたりで、2枚目のスパイっぽい役どころで鳴らした人っだったのでは。それが年相応か、肉付き豊かになり、苦しむ妻を受けとめる夫を貫禄たっぷりに演じている。それでも、自身の仕事とのバランスに葛藤するところもあり、ただの「いい夫」では終わらない複雑な役どころをこなした。

カタルシスを得られる映画ではない。もし、自分が、あるいは大切な人がこのような境遇となったら、どうなるのか。単純にかわいそう、と感想を抱く以上に、多くを考えさせるものがある。みな、老いや病は避けられない。人は誰しもアリスのようになる可能性があるのだ。

もうひとつ、この映画を見て感じたのは、「言葉を紡ぐ」ということが、実はとても大切で大変なことである、ということ。自分の思い、考えを伝えることの奇跡的な営み。だからこそこうしたエッセイにおいても、言葉の一つひとつを慈しみながら綴っていきたい。そんな思いをもたらしてくれた映画であった。