◆書で愛でる七十二候シリーズ~小雪/朔風払葉・橘始黄~
小雪 / 朔風払葉
きたかぜこのはをはらう
[五十九候 11/28-12/1]

小雪 / 橘始黄
たちばなはじめてきばむ
[六十候 12/2-12/6]
しきりに降り注ぐ落葉を「落葉時雨」と呼ぶそうですが、
風が吹き止むと、ふと現れる寒々と枯れ果てていく景色に
どこか美しさを感じます。
凛とした、静寂。
無色へと近づいていく気配。
墨の淡さや滲みのような世界。
お茶の世界では、このような感覚を「冷え枯れる」とも、
「さび」の感覚とも言うそうです。
そうして、冬木立へ。
木々の多くが、裸へと還っていく中で、
日本原産の唯一の柑橘類、
「橘の実」が黄色く色づいていきます♪
常緑樹。
決して枯れることのない木の生命に、
ご先祖様たちは「永遠」を見てきました。
古事記や日本書紀にも登場する橘は、
「非時香果」として、不老不死を象徴するものとして、描かれています。
枯れるものと、枯れないもの。
この自然界の微妙な摂理のなかで 冬の音は響きながら、
この摂理こそが永遠に続いていくのかもしれません。
書は、北風に潔く乗っていく木葉と、
橘の実の丸々とした出で立ちを表現してみました。