母は運転を苦にせず、父や私たち娘の送迎を自分の役目のようによくしてくれた。

私が独身時代、最寄り駅に着く終電に間に合わず、四つも手前の駅に着く最終電車に乗って帰るときも嫌な顔もせず迎えに来てくれた。


物忘れが目立つようになり運転をさせるのは不安だったがどう切り出すか妹と相談し始めた矢先に停車中の母の車にバイクが突っ込むという事故が起きた。


母と友人が車中で話していたところに手前の曲がり角から出てきたバイクが母の車に気づかず突っ込んだという。母の車は後のバンパーが凹んだがケガはなく、相手のバイクは一部が欠けた。

普通はそこで警察を呼ぶところだが、相手の若い女性は急いでいるからと走り出そうとしたので母は相手に連絡先を手帳に書かせてそのまま帰宅した。

バイクから欠けて落ちたお椀のような破片を持って帰ってきた母から事故に遭ったと電話がきた。


何故警察を呼ばなかったのか聞いたら、相手が取り付く島もないほど急いでいたからと言う。


保険会社に連絡をし、警察に行った。


免許取消し中の無免許運転、しかも他人のバイクという最悪の相手だった。当然保険も未加入。


結局、母の保険会社は保険で直して翌年の保険料が上がるより自腹の方が得だと言い納得できないまま自腹でバンパー交換をするハメになった。


何故か相手からバイク修理の見積書が送られてきたが無視した。


この一件、母にとって今回は同乗していた友人にケガをさせなかったが、もしケガをさせたり命に関わるような事故だったら…と、かなりショックな出来事となり、私たち娘は間もなく70歳になるからそろそろ引退したら?と言うことができた。


母は何の未練もない様子であっさり免許を返納し、当時車を持っていなかった次女に車を譲った。


振り返ってもこの免許返納がスムーズにできたことは幸いだったと思う。