デイサービスの前日。


「明日はこの前話したレクリエーションセンターの見学だから、8時半には出かけられるように支度しておいてね」


と母に言うと、そんな記憶はないと言う。更に何故そんなところに行かなければならないのかと興奮気味にしつこく問いつめられた。


どう説明しても記憶が丸ごとない母は納得しない。苦肉の策で孫マジックを使う為、三女に翌日の朝の見送りを一緒にするよう頼んだ。



初日の朝、三女が次男を連れて迎えに来て一緒に実家に行くと玄関ドアを開けた母は驚いていた。


「ばあばのお見送りに来たんだよね〜」


と、まだ会話が出来なかった息子を連れた三女が家に上がり私もその後に続いた。


状況がわからない母は少し混乱した様子だったが、三女が孫マジックを駆使してなんとか身支度ができた。

私は用意するように言われていた名前を書いた歯磨きセットをこっそりカバンに入れ、カバンとスニーカーにの内側にも名前を書いた。


母が孫と子ども向けのTVを観ているとドアホンが鳴った。


母が玄関を開けると面談にきた指導員の人がお迎えだった。


「おはようございまーす!◯◯さん(母)が来るの楽しみにしてたの、よろしくお願いしますねー!」


と、明るくノリの良いリズムで挨拶された母は


「こちらこそよろしくお願いしますねー!お役に立つかわからないけど(笑)」


と、待ち兼ねていたような返事をした。


車に乗ると孫に向かって


「ちょっとばあばお出かけしてくるからママとおりこうさんにしててね〜♪」


ご機嫌に手を振って無事に初めてのデイサービスに出かけた。