独居の高齢者の入浴には色々心配があると思う。
築40年近い実家の風呂場は床が細かいタイル貼りで排水口に向かって設計ミスかと思うほど傾斜がある。引っ越し当初は何も考えずに洗面器に湯を入れると排水口に向かって移動する為、滑らない位置を確かめたり、身体を洗っている最中に体勢を変えるときにうっかり足を滑らせ冷や汗が出ることもあった。ウレタンマットを敷いたこともあったが、どうも母は苦手なようで使わなかった。
認知症に気づく前から母の加齢臭が気になっていた。母自身だけでなく車も家も独特の臭いがした。体裁屋の母に入浴しているか質問すれば「入ってます」とトゲトゲしく返され不機嫌になった。
入浴をしないということは着替えをしなくなることにつながり、更に洗濯も滅多にしなくなるようになった。
着替えをしても着ていた服を洗濯せず、綺麗に畳んで引き出しにしまってしまう。
アルツハイマーは嗅覚や味覚が鈍くなることがあると後で知った。
高齢になると自宅での入浴をやめて、昼間に銭湯を利用している人も多い。市が高齢者を対象に銭湯の入湯券を配布するサービスを利用するらしい。
母にそれとなく入湯券サービスでたまには孫と銭湯に行ってみたら?と勧めてみたが、予想通りの返事だった。
「私は子どもの頃から社宅のお風呂しか入ってないから他人と入るのはイヤなの。家にお風呂があるんだからわざわざ銭湯に行くことないわよ」
(母が子どもの頃住んでいた祖父の勤務先の社宅では家族ごとに順番に風呂を使っていたそうだ)
当初、母の自宅での入浴は週に一回あるかないかだったのかもしれない。