母は時間の感覚から始まり、日にち、季節の感覚を失っていった。


デイサービスの協力で下着や靴下の着替えの問題は解決したが、衣服の着替えはなかなか解決しなかった。


薬と夕飯を届けるときにパジャマを用意し、ハンガーに翌日着る服を掛けておいても、前日と同じ服でデイから帰宅する母を迎えるときはゲンナリした。


「洗濯するからパジャマに着替えて」


と言うと


「洗濯くらい自分でできるから大丈夫よ。あとで着替えたら電話するわ」


と毎回キッパリ断られた。


更に食い下がると


「私が汚いって言うのね!もう私のことはほっといて!」


とキレるので無理強いできなかった。



しかし、清潔・不潔の問題以外に季節感のないコーデにも悩まされることになった。


母はほとんど二階に上がらないので、季節外れの服は二階のタンスにしまい、季節の服は一階の母の部屋にしまうようにしていたが、あるとき、真夏にニットのセーターを着てデイに行ってしまった。わざわざ二階のタンスから引っ張り出したのだが、クーラーから出る冷風が寒いと感じたのかと思いクーラーの温度を28°に上げてみた。


半袖の上に羽織る長袖の夏物の上着が引き出しに入っていても、『寒い=ニット』という思考になってしまったのだと思った。


冬物を私の家に持ち帰り、長袖の夏物を部屋のハンガーにかけておくことにした。

長袖を着たり着なかったりしつつ、次は下着の重ね着が始まった。多いときはブラキャミ3枚の上に半袖2枚、長袖一枚。


この件もデイサービスの入浴時に余分な服を職員の方が回収して帰宅時にカバンに入れてくれることになった。