新撰組黙秘録勿忘草 ~斉藤一~② | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組黙秘録勿忘草 ~斉藤一~②

注意ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。






*新撰組黙秘録勿忘草 ~斉藤一~
CV:高橋 直純



夜の鍛錬が続いて、うっかりうたた寝をしてしまったワタシ。
そんな所を斉藤さんに起こされてしまった。


「昼間から居眠りとはいい度胸だ、おまけに立ったまま眠れるとは・・起用な奴だな。」


一気に顔が赤くなる。

「斉藤さん、いつから此処に・・。」

「先程から何度も名を呼んでいたのに、本当に気が付いていなかったらしいな。まったく、なんと言う体たらくだ、新撰組の名を汚すつもりか。」

ワタシは首を横に振った。

下女の仕事一つ熟せぬとはだらしがない、言い訳があるなら聞いてやると
厳しく詰問された。

「・・・」

「言い訳は無いらしいな、なるほど、剣術の鍛錬を言い訳にしないその姿勢は悪くない、だが、不手際は不手際だ、それは変わらない、よってお前が下女の仕事を完全にこなせるようになるまで鍛錬は無しだ。良いな。」

そう言って斉藤さんは去って行った。


その夜、ワタシは道場に居た。
夜の暗闇に飲まれそうな時は、嫌な記憶が呼び起される。
ワタシは無心に刀を振っていた。

「誰かと思えばお前か。こんな夜遅くに一人で何をしている、京の鍛錬は無しだと言ったはずだぞ。」

ワタシは斉藤さんに一礼して
「すいません、気を紛らす為に、どうしても刀を振りたかったのです。」

ワタシは怒られるを覚悟していた。

「・・そうか、夜になりこうして静かになると思い出すか、あの日の事を。」

ワタシは唇を噛む。

斉藤さんはワタシの横を通り過ぎ、刀を手に取る。
「良いだろう、俺も付き合ってやる。」

すっかり怒られると思っていたワタシは、驚いて斉藤さんを見た。

「丁度、俺も目が覚めた所だったからな。」

斉藤さんはワタシに付き合ってくれた。
手を止めた、斉藤さんは
「それにしてもお前は運がなかったな、こんな時代でなければ、こんな所に紛れ混まずとも、女として十分に幸せになれただろうに、この時代に生を受けた事を悔やむか。」

ワタシは自嘲気味に笑う。
「・・今更、それを悔いてどうなりましょう。」

「そうか・・そうだな・・」

刀を納めながら静に・・
お前は自らの運命を嘆く事なく、立ち向こうとしていると、ワタシに言う。

「お前の直向きさを日頃から少々不信に思っていたが、これで納得がいった。」
「そうと分かれば、もっとお前を鍛えたくなった。」


斉藤さんはワタシの背後に周り、後ろから抱き留める形で、刀を握るワタシの手を取った。


「じっとしてろ、俺の言葉に集中しろ。」

耳元で聞こえる斉藤さんの声に、返って集中出来ない。

「先程までの勢いはどうした、急に腰が引けているぞ。背筋を伸ばせ、そう、それで良い。」

刀の握り方が違うと言い、ワタシの手を覆う。

「・・お前の手は小さい、力を込めればすぐにでも壊れてしまいそうだ。・・この形を忘れるな。敵の前でも決して。」

背中から熱が離れたのを感じた。

「気が済むまで刀を振るえば良い。」

それから夜更けまで、斉藤さんは付き合ってくれた。


・・・ん・・・鳥の声が・・・聞こえ・・・はっ。

「ようやく起きたか。」


此処は・・道場っ!
あのまま眠ってしまったの?!
慌てて起き上がるワタシ。

「急に起き上がるなっ。」

「あ・・あの・・・驚いてしまって・・」

「驚いたのは俺の方だ。」

「何故・・道場で・・・眠って・・」

「まさか、覚えていないのか、夕べあの後、しばしの休憩のつもりだったりのだろうが、随分と気持ち良さそうに眠っていたぞ。」

声を掛けても起きなかったので、こうやって起きるのを待っていたと斉藤さんは言った。

(起こしてくれれぱ良かったのにっ、恥ずかしいっ。)

「まったく・・この俺を待たす事が出来る女など、お前くらいなものだぞ」

「も、申し訳ありませんっ。」

斉藤さんは少し笑いながら
「今更、頭を下げられたところで何も変わらん。」

もう良いと言うように手を上げる。
「・・それにしても・・」

思い出したように笑う。
「お前の寝顔、思わず見入ってしまった。随分と間抜け面だったぞ。」


ま・・間抜け??
少しむっとしたワタシ。

「そう怒るな、勝手に眠ったお前が悪いのだろう。」

そうだけど・・・
斉藤さんは最近の疲れが溜まっていたのだろう、今夜は部屋で良く眠れと言い

「俺はもう部屋に戻る、お前もそうすると良い。それとも・・」

ワタシの耳元で
「俺の部屋に来るか。」

飛び退くワタシ。
斉藤さんらしからぬ冗談に目が覚めた。

「冗談だ、そう顔を赤くするな、そんな事をしたらお前も俺もこの場所で生きて行く事が出来なくなるのだからな。」

斉藤さんは朝稽古に行ってしまった。

その日の夕刻、台所に居たワタシを斉藤さんが訪ねて来た。

「どうしたんですか。」

「ここのところお前の働きが良いとあの土方さんが褒めていたのでな、光栄に思うと良い。それを伝えに来た。」

「ありがとうございますっ。」

土方さんはワタシに声を掛ける事はしなかったが
ちゃんと見ていてくれた・・それが嬉しかった。

「鬼と恐れられているあの方が、他人を、しかも女を褒めるとは珍しい。」

先日は多少の失敗があったが名誉挽回をしているようだと。

「お前は良くやっているぞ。」

これは斉藤さんの・・ワタシに対しての言葉?

「ん・なんだその顔は、俺が言った事に驚いているのか。別にお前の為に言ったのではない、土方さんの伝言を預かったから伝えに来ただけではないか。勘違いされては困る。」

もう良い、この話は止めだと
少し顔が赤くなった斉藤さんはワタシから視線を外した。

「あ・・それと・・もう一つ近藤さんからの伝言があって・・まったく俺には解せない伝言だ。」

ワタシに背中を向けて言う斉藤さん。

「近藤さんのものでなければ良いと、何度思った事か・・」

ワタシに向き直り
「良いか、良く聞け。」





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