新撰組血魂録勿忘草 ~沖田総司~⑤ | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組血魂録勿忘草 ~沖田総司~⑤

注意ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。





*新撰組血魂録勿忘草 ~沖田総司~
CV:鈴木達央


次の日の夜、月が綺麗だったので
ワタシは縁側に座って見ていた。

沖田さんも、月が綺麗だったからと部屋を抜け出たようで
縁側でワタシを見掛けて声を掛けてくれた。

「まだ起きていたんですか。」

「はい、月が今夜は綺麗で、見ていたんです。」

「身体は大丈夫ですか。ちょっと無茶をしましたからね。まだ何処か痛むなら言って下さい。」
「大丈夫?」


ワタシは頷いた。
沖田さんは心配そうにワタシを見ながら、横に座った。

「そう。なら・・良いんです。」

そう言いながら、ワタシの頬にそっと触れた。

「沖田さんは、大丈夫なんですか。」

「大丈夫ですよ、重ね着をする事にしましたから。」

「月を眺めていると、心が洗われるような気がするんですよ、荒れ狂っていた感情も静かに萎えて行くんです。ずっと・・こんな月を眺めていられたら・・きっと僕は誰も傷つけないで済むのにな。」

静かに話す彼の横顔を月が照らしていた。

「ねぇ、極夜って知ってますか。」

「極・・夜?」

彼は頷いて
「何処かの国では、一日太陽が昇らない日があるそうなんです。不思議ですよね。此処も・・そうなれば良いんですよ。」
「この夜がずっと続いて、朝なんて来なくて、明日なんて永遠に訪れない。そうしたらずっと、僕は・・時が進まなければ僕は君ともずっとこうしていられるんです。素敵でしょう。」
「こうして二人で、月を眺めている事も出来るんです。」


時間を止められるなら
そうしたい・・。
こうして沖田さんの隣で体温を感じていたい。

でもそんな奇跡は起こるはずないと
沖田さんは薄く笑う。

「だから決めました。僕は・・屯所を出ます。」

ワタシは、はっとして沖田さんの顔を見た。
彼は、落着いた様子で、静かに言った。

「近藤さんの言う通り、療養に専念しますよ。・・どうしたってそれが一番良い方法なんですよね。」

彼は・・受け止めた・・んだ。
近藤さんも辛かったと思う。
そして、それを受け止めた沖田さんも。

近藤さんも自分を邪魔者扱いしたんじゃない、分っていると
沖田さんは言った。

「僕の病を心配して、僕がこれ以上、虚勢を張らずに済むように気遣って、ああ言ってくれただけで・・ただ僕がそれにどうしても納得出来なかっただけで・・みっともない所を見せたのが君だけで良かったですよ。」

「君なら・・僕がどんな醜態を晒しても平気なんだって、もうちゃんと分りましたから。疑う事は二度と無いでしょう。」

少し、はにかんだように笑う。
出立の用意をしなければと
立ち上がる沖田さん。

ワタシもお供するのだろうと、立ち上がると
沖田さんに制された。

「僕は少しの間、屯所を留守にするだけですから、君は屯所に残って、ちゃんと働いて下さい。」


「え・・嫌です、ご一緒します。」

彼は首を横に振る。
「君を拾ったのは、新撰組なんです、それを考えたら、恩を返すため、今まで通り屯所で働くのが当然でしょう。」
「それに・・やっぱり僕の病はまだまだ軽いですから、昨日、手遅れだなんて言ったのは、いつもの悪趣味な冗談です。僕はすぐに元気なって戻ってきますよ。」
「君が寂しがる暇なんて、無いくらい、あっと言う間にです。」
「僕は新撰組一番隊組長なんです。僕が生きて行く場所は新撰組と決まっています。他に行く場所なんて、無いんです。」


我慢出来ず、泣き出したワタシの頭を
優しく撫でながら沖田さんは言う。

「あっそうだ、僕はまだ君を下女としては認めていませんから、戻ってきたら君がどれだけ下女として成長したか、見定めようと思います。だから次に会う時までに立派に成長しといて下さいね。新撰組の為に、尽くして下さい。」

本当に君は良く泣くと言いながら
沖田さんは優しく抱き締めてくれた。


数日後、沖田さんは屯所を後にした。
見送りは要らないと
すぐ、戻るからと
いつものように、ワタシの頭を撫でてくれた。



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そして僕は、屯所を出立した
どうしようもなく 蝕まれた身体と
花火は とうに散ってしまったのだと
やっと自覚した心を引き摺って
一人 新撰組を去った

療養の為に身を寄せた屋敷は
男所帯の喧騒とも 
刀を振るってばかりの殺伐とした日々とも無縁で
穏やかで 安穏とした時間が
ゆっくりと流れている所だ

物心が付いた時から一緒に居た
近藤さんも 土方さんも
此処には居ない
僕はもう あの人達の行く末に
付き従う事は 出来ないのだろう

文でも送ってみたいけれど
そんな事をしたら 心配を掛けてしまう
僕はあの人達の 邪魔になってはいけない
だから僕は多分 このまま何もしない方が
一番良い

文と言えば 君からは頻繁に
文が届きます

僕の病状を尋ねたり
見舞いに行きたいと言う内容だったり
季節の移り変わりについて語るものだったり
鶴を折れるようになったっていう報告もありましたっけ

そういえば結局 風車の折り方は
教えず仕舞いでしたね
これは 心残りになりそうです
最後の夜に
思い出せば良かったな

でも僕は あえて文を出しません
君におかしな期待を させたくありませんから
そうだな
どうしても堪えられなくなって
最後の最後に一通だけ
出すかもしれませんけど
それでもきっと 僕は在り来たりの事しか 綴らないんでしょう

だから 君は
最後まで知ることはないはずです
僕が 一体どれだけ君の存在に救われているかという事を

君に遭えて良かった
こんな僕を好きだと言ってくれて
ありがとう

けれど
どうか
少しでも早く 僕なんかより
ずっと君を大切にしてくれる人を見付けて
どうか
幸せになって下さい

多分 僕はとても嫉妬するでしょうけど
それでも 君が楽しそうに笑ってくれるなら
まぁ良いかって きっとそう思えるはずですから
僕はつねに君と共に居て
君の幸せを見守る事にします

だから いつかまた再会出来る日まで

さようなら


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夢を・・見ていた
沖田さんが元気なって
帰って来た夢だった。

でも、ワタシは泣いていた

眠れずワタシは布団から出て
部屋を出た。

珍しく霧が出ていた。
庭に出てみると
霧の中に人影が見える

見間違えるはずがなかった
遭いたくて
遭いたくて
思い焦がれた人の後姿

消えそうなその後姿
霧が見せた幻だろうか

いや そうじゃない
彼が着ている
白い着物・・
全てを悟った

ワタシは走り出していた

嫌だ、待ってっ。
生も死も共にすると
ワタシは誓った
一人でなんて 逝かせない
そんなの 許さないっ。



「沖田さーーーーんっっっっ。」


ゆっくり振り向いた彼は
少し困ったような顔をしたが
手を静かに 差し出した

ワタシは 霧の中
沖田さんの胸に飛び込んだ


・・・暫くして 霧が晴れた

そこには
二人の姿は無かった。

近くに勿忘草が2輪
寄り添うように咲いていた。


沖田総司  慶応4年(1868)5月25日夕、没。享年25歳。


-完-






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◆総評◆


すいません・・少女漫画みたいな終わり方で・・
ラストは私の脚色です。
文の場面で本編は終っています。
生還トラックは"夢"として捉えています。

二人には道行をしてもらいました。
唯一、自分の意思ではなく、病気でこの世を去る沖田さんだから
ワタシが付いて逝く事を許してくれるだろうと思いました。
この物語の象徴である勿忘草を添えました。


刀が振り下ろせないくらい、衰弱が激しい沖田さんに
近藤さんも辛い決断をします。
なかなか受け止められない沖田さんは、彼女を傷付けます。
君も僕なんか要らないと言えば良いんだ。

全て壊れてしまえば良いと、言わんばかりの行動ですが
ワタシは決心して彼を受け入れます。
多分この時、殺されても良いとさえ、思ったと思います。
それくらいの気持ちが無いと、彼を抑えられなかったんだと思います。

屯所を出る覚悟を彼女に話す場面が、一番好きです。
穏やかに月の下で話す沖田さんは、とても素敵でした。


今回の鈴木さんの沖田さん
泣き台詞が多かったんですが
凄い良かったです。他の演技も聞きたくて
〔一人鈴木達央祭り〕をしたくらいです(^_^;)
一番好きな台詞は、泣きながら
「僕だって・・僕だって君を愛してるんだ、離れたくないっ。」
血魂録で新しいBGMが何曲が入ってますが、このシーンにも入ってます。


血魂録 沖田総司はこれにてでございます。

長い文章を読んで下さって
ありがとうございました。






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