新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~⑤ | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~⑤

注意ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。



$中島 陽子の〔And ...〕



*新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~
CV:細谷佳正


「まずは、其処に這え。這い蹲れと言ってるんだ、分らないか。」


・・又そんな命令・・

「・・嫌です。」

「聞けないな、犬ならば主人の言いつけを守るものだ。」

近づいてくる土方さんを避けるワタシ。

土方さんはワタシを上から見下ろしながら、"犬"に羞恥心等無いはずだ、服従しろと迫る。
ワタシは首を横に振る。

「何、逆らうのか、・・そうか・・お前はまだ躾けが足りてないみたいだな。ならば仕方がない、俺が丁寧に教えてやる。」

意地悪く見下ろす視線に観念して
ワタシは這い蹲る。

出来るなら最初からそうしろと言われる。

「男の前で這い蹲る等、生娘のする事とは思えないな、お前に逃げ場等無い事は分かっているはずだ。さぁ、手を出せ。」

しぶしぶ手を出す。
土方さんは褒美だとでも言うように、ワタシに口付けをする。
手首を紐で結わえられた。

「今、どんな気分だ、言ってみろ。」

「・・・」

「どうした、言えないのか。」

「こんな事、止めて下さい。」


まだ躾けの最中だ、この間は途中だったが、今日は逃がさないと
着物を緩められ、ワタシの背中が露わになる。

「綺麗な背中だ、普段着物で隠れてる場所が特に美しい。だからもっと、暴いてやりたくなる。」

「他の誰から見えない所を、俺だけが知る場所を」

背中・首・耳と自分の跡を付ける土方さん。

「身体が熱くなってきたな。恐れ強張って冷え切っていたのが少しずつ溶けていくようだ。」

「う・・そ・・・。」

「俺は嘘など言ってはいない。こうしてお前の肌に触れていれば嫌でも分る。」

そう言って、背中に手を回して引き寄せる。


「お前が、ゆっくり、溶けて行く・・。」


優しく口付けをされる。

「お前は俺の忠実な"犬"だ。」

「ほら、こっちを向け・・・この綱を解いたらお前は何処へ行く、身寄りを亡くし、行く宛てもなく此処に流れ着いた。」
「もし、何に妨げられる事も無く、自分だけの力で行きたい様に生きられるとしたら、お前は・・お前は、俺の前から姿を消すのか。」


(えっ・・土方さん・・)

黙ってないで答えろと言われる、けど
そんな事よりワタシは土方さんの瞳が濡れてる事に
心が揺れた。

ワタシは手を伸ばし、彼の頬を伝う泪を拭った。
彼は自分が泣いてる事に納得していないようだった。

「・・お前の前でこんな醜態を晒すとは・・新撰組の近藤さんも、総司も、共に戦う仲間も、いつか俺の前から全てが無くなったら・・・その時が来たら・・俺には何も残らない。」

震える声で土方さんは言う。

こんな弱々しい彼を見たのは初めてだ。
虚勢を張り、法度を重んじ、組をまとめ・・
でも本当の土方さんは、心根の優しい、繊細な人。
それを知られたくないから
自分から〔鬼〕と言われるようにしている。

「俺は本当に、一人なる・・。」
「全てを失った時、俺は一体、何を支えに生きれば良い?」


ワタシを震える手で抱きしめる土方さんの背中に
手を回し抱き締める。

「お側におります。ワタシだけは、何があっても貴方のお側におります。」

「そう・・だな、お前のような奴が居れば、少しは気が紛れるか。」

ワタシは少し笑って土方さんの顔を見た。
彼は目を細めてワタシを見つめた。

「不思議なものだな、最初は何処にでも居るつまらない女思っていた・・お前に興味など無かったのだが、お前は俺の側に居ろ、そうすれば俺は安心して、今を生きられる。」

そういう彼の瞳は今まで見た事も無いような
穏やかなものだった。

「お前はずっと、俺の・・俺だけの・・"犬"だ。」

(本当に意地っ張り・・・そういう風にしか言えないんだから)


ワタシは土方さんの胸の中で幸せな気持ちで居た。


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段々暖かくなって来た春先
土方は縁側にいた。

「知れば迷い、知なければ迷わん・・か。」

ワタシは近藤さんから御使いを頼まれた帰り
縁側を横切ろうとしていた。

「おい、こっちへ来い。」

呼び止められ、戸惑いながら近寄ると
おっかなびっくり近寄るなと土方さんかに言われたけど
昼間の土方さんはやはり威圧的で、近寄りづらい。


「もう、用事は済んだのか。」

「はい。」

「そうか、今日は皆、出払っているようだな。花見の用意だとか言っていたが、お前も此処に来て一年近くか、最初の頃は見ていて不安になるような頼りなさだったが、今となっては、お前が居ないと屯所の家事が立て行かなくなってきたな。」

(土方さんに仕込まれましたから)

庭の見た目も良くなった、ワタシが手入れしているからだろうと
こちらを見て笑う。

「あ・・こんな所に花が」

「隊服のあさぎの色に似た花だな。」

「勿忘草です・・この花の名前。」

「可憐な花だ。」

「でも、どうしてこんな所に咲いているかしら。」

ワタシは小首を傾げた。

自然に何処にでも生える花だから、特別理由など無いだろうと
土方さんは勿忘草を見ながら言った。

「そうか・・もう春か」

伸びをする土方。

今日の土方さんは、少し・・なんと言うか
感傷的だ。

「なんだその驚いたような顔は、今更知らぬ顔でもないだろう。・・そんな鈍い奴だったか、お前は。」

その言い方が、とても優しくて
嬉しくて胸が痛くなる。

「"犬"も主も互いが無ければ始まらない。どうやら俺にはお前のような者が必要らしい。損得無く・・いっそ愚かなほど無欲に、只、側に居る。」

いつも言わないような言葉を投げかけられて
少し赤くなる。

「何を恥ずかしがっている、いい気なるな、お前など二の次だ。新撰組こそが俺の在るべきところだからな。」
「だが・・」

ふいに抱き締められた。
土方さんの匂いがする。

「その次がお前だ、俺の命より先に。」
「俺の命一つで新撰組を救えはしない。だが・・お前だけは守もってやる。ずっと側に居ろ。」

「お前は、俺のものだ。」


口付けを落とす土方さん。

「愛してる。」

この言葉を聞けると思ってなかった。
きっと聞けないままだと・・思っていた。
耳元に落とされたこの言葉の重みを
ワタシは感じた。

(この人の言ってる言葉に嘘はない。自分の命を投げ打ってでもワタシを守るだろう。でも・・それはワタシも同じ。ワタシも命掛けで貴方を守る)



人も時代も流れてゆく
何一つ 一所に留まる事はない
多くの命が失われ
多くの者が去り
それでも  この場所があり
集う者達が居る

その奇跡を思えばこそ
いつか訪れる別離を 恐れる事など
愚かな事だろう

俺に出来る事は 只一つ
死に物狂いで 今を生きる事だ

近藤さん 総司
大切な仲間の為に

そして 掛替えの無い
お前の為に


-完-



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


◆総評◆

とても真面目で責任感が強い土方さんでした。
隊士の中で隊の事を一番大事思っていたんじゃないでしょうか。
近藤さんとは違う意味で。

"犬"と何度も出ますが、その場面で捉え方が違うような気がしました。
〔下僕〕・〔女〕・〔愛しい人〕
強がりで意地っ張りの土方さんは、"犬"と言う表現しか出来ない
不器用な人なんだろうなと思います。

好きな場面は山南さんを追う場面が一番好きですね。
緊迫感があって、総司クンも出演して。
本当は山南さんを追い詰めたくないっ、でも法度は守らねば・・
土方さんの苦悩が見えます。

ワタシは最初はもぅ、どうしょうもない甘ったれで
頭の弱い娘でしたが、土方さんの仕込み(笑)のおかげで
生きてゆく術を身に付けていきます。

そして自分の意見も言えるような、しっかりした部分も養っていきます。
最後には土方さんを〔守る〕とまで言いましたから(笑)

細谷さんの土方さん。

すいません・・また存じ上げない声優さんです。(><;)
甘さはあまり無く演じられてましたね。
やはり『鬼の副長』なので。
最後のトラックは、凄く優しい~。
自分の命よりも彼女の方が大切。
そんな事言ってもらえたら
一生添遂げる!


すいません・・妄想です。

今回で土方さん編は終了です。

長い文章を読んで頂いてありがとうございましたっ。

次回は・・斉藤さんと言いたいところですが
血魂録の沖田さんを書いてしまいそう・・です((>д<))





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