新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~④ | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~④

注意ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。



$中島 陽子の〔And ...〕



*新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~
CV:細谷佳正



どさっと畳に倒され、体重を掛けられて身動きが取れないワタシ。

「偉そうな口を利いていたと思ったら、急に顔色が変わったな。」
「まさか、忠実に俺の言う事を聞いていれば、この屯所で滅多な事は起こらないと思ったか。身の危険などあるはずが無いと。ふっ、甘いな。」


なんと身を起こして、逃れようとするワタシを
引き寄せ
「暴れるなっ。大人しくしていろっ。大人しくしていろと言うのが分らないのかっ。」

聞き分けのない"犬"だと言われ怖くなった。

「手を出せ。」

「ど、どうして」

「良いから出せっ。」

「"犬"が人のように振舞う必要だとない。お前が"犬"である事を思い出せるように・・その手を縛ってやろう。」

抵抗する暇もなく、手首を紐で縛られる。

「どうだ、お前が何なのか思い出したか。誰に飼われているのかを。」

ワタシは土方さんを強く睨んだ。

「まだ分らないか、そうか・・では首輪をしてそこの柱に繋いでやろう。」

首に紐を結わえられた。

土方さんはそんなワタシを、愉しそうに見ている。
主人を軽んじる"犬"はこうして躾けないと、と言われた。

ワタシは何をされるのか怖くなり、震えた。

「・・震えているな、良い顔だ。お前を初めて見た時から、そんな顔を見てやりたいと思っていた。怯えて頬を引きつらせて、ただ自分ではどうする事も出来ない。そんな絶望に満ちた顔だ。」
「・・・堪らないな。」


ワタシの頬に触れ、満足そうに見つめる。

「もう、離して・・許して下さい。」

許しを乞うなど、俺を煽るだけだと言われた。

「それとも・・ワザとか?」

「・・何をする・・つもりですか。」

「さぁ、どうしようか。お前は俺に興味があるんだろ?俺の本心、本当の姿、新撰組副長では無い、俺自身を知りたいと思っている。違うか。」

・・確かにそう思う。今でさえそう思っている。

「だったら・・お前を見せてみろ。お前の全てを俺に見せれるんだ。まだ誰にも見せた事の無いお前を。」

下を向くワタシに顔を上げろと
そして、口付けをする。

この状況で口付けをする土方さんに
頭が混乱する。

知らず知らず、泪が溢れる。

「誰が目を逸らして良いと言った。俺を見ろ・・何度も同じ事を言わせるな。」
「お前は俺の何なんだ。」


「お前の知りたかった本当の俺は、存外、優しい男かもしれないぞ。お前が確かめてみると良い、お前から俺を暴いてみせろ。」

冷たくなったワタシを抱きすくめる。
それは乱暴な感じはせず、優しい。
白い肌に紅い華を散らす。

「・・まだ泣いているのか、だが、それも今だけだ、今はそんな顔で怯えていても・・いつかお前も俺を求めるようになる。身体だけじゃない、心もだ。俺にこうされるのが嬉しくなる。手を縛られ、自由を奪われて、喜ぶようになる。」
「そしてお前は見も心も俺の"犬"になるんだ。分ったな。」


土方さんは・・・それ以上は手を出してこなかった。

「・・ほら起きろ、そうやって泣きはらした顔を見るだけで俺は充分気分が良い。けど、そうだな、いつかお前がすっかり俺の"犬"になったら、お前の首に繋がってるこの手綱を、緩めてやっても良い。」

手を持って起き上がらされたワタシに口付けを一つ落とす。
その時、気付いた・・。

(土方さんにとって"犬"って・・・恋人の事だ)

まだ、雨は降り続いていた。


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ワタシは沖田さんに御使いを頼まれ、町に出掛ようとしていた。
実は沖田さんが診療所で履き物を間違えて、履いて帰って来たので
内緒で取り替えてくるように頼まれたのだった。
屯所の誰にも言わず出掛けるつもりだったが
出口近くで土方さんに出会ってしまった。

「おい、お前、待って!」

逃げるワタシを土方さんの手に阻まれた。

「なんだ、その荷物は。何処へ行く。なんだ、俺に言えない事でもあるのか。」

不機嫌になる土方さんに、ワタシは押し黙る。

「何故、黙っているっ。此処は人通りが多いな、良いから、来いっ。戻るぞっ。」

手首を掴まれ、屯所に連れ戻されるワタシ。


土方さんの部屋に連れてこられ
何処に行こうとしていたか聞かれた。

「嘘をなど付こうしても、意味が無いぞ。隠さずに言えっ。」

ワタシは仕方なく、本当の事を言った。

「なんだそれはっ、総司も総司だがお前もお前だっ。隠せば叱られる事は分かっているだろう。」

まったくと半場呆れ顔でワタシを見る土方さん。

「・・そう言えば、どんな具合だった、総司は。」

「少し、顔色が良くなかったです。」

「そうか・・悪いがあいつの部屋に火鉢を入れてやってくれ。今夜は冷える。」

「分りました。」

「ああ、ついでにお前の部屋も温めておけ。」

「えっ。」

「・・お前に風邪でもひかれたら、屯所内の家事が一切滞ってしまうからな。」

ワタシから視線を外してぽつりと言う。

そんな土方さんの心遣いがとても嬉しくて
火鉢の用意をする為に、部屋出た。


昼から雪が降り出した
ワタシは火鉢を土方さんの部屋まで
届けた。

「ああ、すまない、そこに置いてくれ。」

「はい。」

「今日も一日雪だったか、今年は良く降る。このまま冬が終らないかのようだ。もう三月になろうと言うのにな。」

土方さんは煙管を吸い、煙を吐き出す。

京の冬は長い。
今年は雪深く、あっという間に辺りを白く染めて行く。

「・・今日はすまなかったな。お前が急に姿を消し、誰も行き先を知らない。そんな事を聞いて少し・・頭に血が上った。」

土方さんが、ワタシに謝るなんて・・
「いいえ、気になさらないで下さい。それより・・どうかしたんですか。」

「お前に心配されるとはな・・誰かか黙って居なくなるは、嫌なものだ。」
「行く先も、生きているのか死んでいるのかも分らない。・・目の前で死なれるより性質が悪い。」
「忘れてしまう事も出来ず、いつまでも頭に残る・・。」



「何も言わず出掛けてしまって、すいませんでした・・。」


お前が謝っても仕方ない、総司には今度説教してやらないと
と土方さんは少し笑う。

「あいつはいつまで経っても子供みたいな所がある。」


「沖田さんを随分、可愛がっていらっしゃいますね。」

あいつは兄弟みたいなものだからと
手の掛かる弟みたいなものだ
穏やかな表情で話す。

「近藤さんと沖田さんとは、長いんですか。」

「・・そうだな、お前は知らないだろうな、俺がまだ奉公していたような頃、俺達は"試衛館"と言う江戸にある道場で知り合った。」
「原田や平助、斉藤君とも其処で知り合った。」


自分はやたらと子供の多い家の末っ子として生まれた。
何になる事も出来ず、長い事放浪の身を味わったと。

近藤さんは悪がきだった自分を
本当の兄弟のように愛してくれた。
昔から生意気ばかり言って、そのくせ寂しがり屋で甘えて
くる総司もそうだと。

土方さんが昔を語るなんて・・
遠くを見ながら話す彼は
いつもの近寄りがたさなく
柔らかな雰囲気だった。

二人の・・
近藤さんと沖田さんに対する
信頼と愛情は確かなものなんだと
ワタシは感じた。

「あの二人が居るから今の俺が居る、こんな事を話したところで伝わらないだろうな、・・お前だからじゃない、誰でも、だ。」
「俺が鬼となるのは、その為だ。山南のように意思を違え、離れて行く者もあるだろう。それだけならまだ良い、血迷い、組織に刃を向ける者も居る。」


「新撰組が俺の居場所であるならば、俺が其処でする事は只一つ、法度を重んじ、それに反する者を処罰する。新撰組の仇名す者を斬り、排除する。それが新撰組を・・・・俺が近藤さんと総司を守る為に出来る事だ。」


「お二人が、大事なんですね。」

「ああ、そうだ。」

掛替えの無い家族だから・・・土方さんは言う。

それを聞いてワタシは俯いた。

(羨ましい・・・)

ふと、寂しくなった。

そんなワタシを見て土方さんは
文句でもありそうな顔だと言う。

「い、いいえっ、羨ましいと思いました。ワタシも男に生まれて、土方さんに認められる存在になりたかったなって思って・・」

土方さんは、少し間を置いて
「・・何を言い出すかと思えば、今更そんな事を言ってどうなる。お前は女だ、寝ぼけた事を言うな。」

辛気臭い顔をするなと言われた。

(そんな事言われても・・その中に入って行けない自分は・・とても寂しく感じたんだもの、仕方ないじゃない・・)

「・・こっちへ来い。」

「でも・・」

「っ、良いから、早く・・来い。」

土方さんの側に行くと
ゆったりと抱き締められる。

「言っているだろう。お前は俺の"犬"だと・・。盲目的に主人に懐き、何処に行くにも付いて回る、ろくな役には立たんが、只、側に居る事を許される・・」

ぎゅっと抱き締める腕に力が加わる。


「お前は・・・俺の"犬"だ。」

「さぁ・・"犬"は"犬"らしく、主人の言う事を聞くんだ。」

抱き締められながら
思考が無くなって行く。