新撰組黙秘録勿忘草 ~藤堂平助~① | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組黙秘録勿忘草 ~藤堂平助~①

注意ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。


$中島 陽子の〔And ...〕


*新撰組黙秘録勿忘草 ~藤堂平助~
CV:下野 紘



池田屋襲撃の際、額に傷を受けた藤堂は、屯所で養生していた。
一方、池田屋の騒動に巻き込まれ、浪士に両親を目の前で斬られ
右腕を負傷し意識を失ったワタシは
新撰組の屯所に運ばれた。

手持ち無沙汰の藤堂はそんなワタシを看病していた。

「ん・・・」

意識が戻るワタシ。

「ああ、起きたか。具合はどうだ。お前、ずっと寝込んでたんだぞ。」


あ・・そうだ・・何か・・騒動が起こって・・
此処どこ??
それに・・

「あの・・そんな事より、貴方は誰?」

「俺は新撰組八番隊組長の、藤堂平助。新撰組くらい、お前も知ってるだろ?」

(っ!新撰組!・・痛っ)

起き上がり右腕を上げようとしたら、鋭い痛みが走った。

刀傷を右腕に受けたから、あまり動かすなと藤堂さんは言う。

「・・額の包帯・・・どうしたんですか。」

「ああ、これは池田屋の時に・・いやっ、別に油断してたとかじゃねーからなっ。これは、あれだ、男の勲章ってやつだ。」

包帯を指差し、藤堂さんは言う。
・・言い訳っぽく聞こえるけど・・。

自分の傷なんて、どうでも良い。両親を目の前で斬られたと聞いたが
と藤堂さんに言われ、記憶が思い起こされた。

「・・斉藤君から聞いた。結構しんどい場面、見ちまったんだな。怪我してるからって、斉藤君が隊士にお前の事、屯所に連れてくように指示したみたいだけど・・」

ワタシは俯き、両手を握り締めた。
(あれは、夢じゃなかったんだ・・本当に・・)

「思い出させて悪いな・・。」

藤堂さんは、ワタシを抱き締めた。
(えっ?・・)

「分るよ、両親を斬られた気持ち。・・俺だってそうなんだ、お前と一緒、俺も昔に両親を殺された。辛いよな・・ずっと一緒に居た家族が一瞬にして消えるってさ。思い出したくない事は、記憶から消しちまえば良い。」

(あの・・嬉しいんですけど・・でもいきなりこれは・・。)

「何、身体、固くしてんの。お前を慰めたいだけだよ。信じてくんねーの?不安な気持ち、すげー良く分かるよ。身体、震えてる。こうして抱き締めれば、少しは安心出来るか。」

髪が良い香りだの、男の髪と手触りが違うだの、言い出す藤堂さんに
段々疑問を持ち始めた。

「あの・・怖い・です。」

「怖くなんかねーよ。慰めてやってるだけだって。言ったろ、お前の傷付いた気持ち、良く分かるんだ。だから・・」

いきなり口付けをされた。

(ひゃっ!ちょっとっ!)

「っ、何、抵抗してんのっ、そんな事したらっ、傷口広いちまうんじゃねっ。汗かいてるな。着物、肌蹴けさせれば、ちょっとは涼しんじゃね?」

「背中の辺りも、こんなに濡れちゃってさ。そんなに暑い?それとも俺との口付けでこうなっちまったのか。」

藤堂さんから身体を離そうと、身をよじる。

「ふっ、必死で良い反応。もっとしてやるよ。」

再び口付けされた。

胸元に手を入れてくる藤堂さんを、無我夢中で突き飛ばした。
(なんなの?!なんなのよっ、この人っ!!)

「なっ、何だよ!いてーなっ!せっかく相手してやろうと思ったのに。たかだか口付けして、胸触ろうしただけで、そんな減るもんじゃあるまいし。」

(むかっ!人を何だと思ってんよっ!!このばかっ!!)

ワタシは拳を握り締め、藤堂さんを殴った。

「っ!いてーっ!額に傷があるってーのに、顔をぶっ叩いてくるとか、ありえなくね?そんな奴いる?お前さっ。見て分んだろ?結構、致命傷だったのっ!これっ。傷口、開いたらどーすんだよっ。乱暴な女だなっ。」

寝顔みてる限りは良い女だったのに・・とぶつぶつ言われた。


(なっ、何、勝手な事ばかり言ってるのよっ!)


藤堂さんは土方さんに言われて、付き添ってただけだと言う。

(あ・・それは・・)
「あり、ありがとう。」

「別に、礼なんて言わなくて良いし。そんで?お前これからどーうするつもりなんだよ。他に身寄りは?・・真面目な話し、行く宛ては、あんのか?」

ワタシは首を横に振った。

「じゃ、そこに居た家族が全てだったんだな。」

じろじろとワタシを見て、良く躾けられた箱入り娘か言う。
小料理屋だった家を無くして、稼ぐとこなんて無いだろうと。
これからの身の振り方を考えろと言われた。

(・・確かに、住む所も働く所も、今は無い。急に不安になってきた)

「俺は土方さんに報告してくる。じゃな、おてんば娘・・じゃなかった、乱暴女。」

いじわるくワタシに言いながら部屋から出る藤堂さん。


(乱暴女ですって?!助平男!!・・でも本当だ・・これからどうしょう。)



土方さんに下女にして欲しいと頼んでみたワタシ。
でも、断れてしまった。
気落ちしている所へ、藤堂さんが現れた。

浮かない顔をしているワタシに
理由を聞いた藤堂さん。


「他を当たった方が良いんじゃねーの。他所から来た女が新撰組に期待なんかすんな。」

ワタシは泣きそうになるのを唇を噛み我慢した。

「仕方ねーだろ。でもなっ、一回断られただけで諦めるっては良くねぇ。まぁ、もう一回くらい、土方さんに当たってみたらどうだ。」
「誠意を見せるってのも大事なんだしさ、それでも駄目だったら今度こそ、諦めろ。」

(本当だ・・。一回お願いしただけで諦めちゃ駄目。)

「藤堂さん、ありがとうございます!」

「俺はただ、武士道を説いただけだ。っ、話しは終わりっ。俺は稽古に戻る。お前みたいに暇じゃねーんだよ。」

藤堂さんは、じゃなと言って稽古に戻って行った。

ワタシはその足で、もう一度土方さんにお願いする為に、会いに行った。


ワタシはその夜、お菓子を持って藤堂さんの部屋に行った。
藤堂さんが土方さんに口添えをしてもらったみたいで
新撰組の下女として働けるようになった。

藤堂さんにお礼を言うと、俺はついでに言っただけだと
頬を少し赤くして言った。

京で有名なお菓子屋さんで買ったお饅頭を藤堂さんに手渡した。

「今は、これくらいお礼しか出来ませんけど、どうぞ。」

「っ、だから礼を言われるような事はしてねーって。でも、ま、まぁ、これはもらっといてやる。」

藤堂さんはお腹が減っていたようだった。
一口お饅頭を藤堂さんは頬ばった。

「そういや、これ『笹屋伊織』の包みじゃねーか。俺、此処の菓子すげー好きなんだっ。」

そう、今、京で人気のお菓子屋さんですもん。
並んで買ったんですよ。
良かった、喜んでくれて。

「ほら、お前にも一口やるよ。」

「そんな、良いですよっ。」

「遠慮すんなって。ほら、あーん。」

口元までお饅頭を持ってこられ、ワタシは少し口を開けると藤堂さんがお饅頭を口の中に入れてくれた。

噛むとふわっと餡子の甘さが広がる。

思わず、美味しいと言ってしまった。

「俺も此処の饅頭は別格に上手いと思う。」

と又お饅頭を食べた。

「まっ、折角、土方さんが許可してくれたんだ。頑張ってもらわないとなっ。」

「下女とは言っても新撰組の一員になるんだ。品の無い行動はしない事。」

「・・いきなり乱暴しようとした人に、言われたくありませんよっ。」

「別に男なんだから、あれ位、当たり前だろっ。・・それにお前だって・・」

急に肩を抱き

「結構お前だって、良い顔してたじゃん。本当は俺の口付けで、感じてたんじゃねーの。又したいか、俺と深いくちづ・・」

ゆるゆる近づいて来た藤堂さんの顔を目掛けて、ぶんっと手の平を出す。

「っ、おっとっ、へへっ、危なかった。又、殴られるとこだったなぁ。」

避けられた・・。もうちょっとで当たったのにっ。
まったく油断も隙もないっ。

藤堂さんは勝ち誇った顔で

「からかっただけだろう。ふふっ、なぁ、一緒に食おう。この饅頭、今日は晴れてて、月がすげー綺麗に見える。」

「意外と風情のある事を言うんですねぇ。」

「お前なぁ・・俺だってその時々の景色を大切にする心ってんのがだなぁ・・」

「・・ある、とは思えなかったです。」

ワタシは少し、からかうように言う。

「はいはい、どーせ、俺は適当に見える男ですよっ。」

お茶を入れてくれと藤堂さんに言われ
ワタシは立ち上がって炊事場に行く。
お茶を入れて、藤堂さんに渡した。

一口飲んで、上手いと言ってくれた。

「良い夜だな。」

本当に・・。

下女になったのがそんな嬉しいのか、辛い事があったら聞いてやると
藤堂さんは言ってくれた。
この人は、不良なのかと思ったら
こんな事もさらっと言ってしまう。

良く見ると大きな瞳が、表情を豊かに変える。
鼻筋も通っていて、かなりの・・美男子だ。
見惚れていた事に気付いて、視線を反らした。

「いつでも声を掛けろ。」

「ほ、本当は、優しいところがあるんですね。」

なんだか急に恥ずかしくなった。

咳き込む藤堂さん

「おっ、お前突然何、言い出すんだよっ!ああ、もう、茶が、こぼれちまったじゃないかよっ。・・お前が変な事言うから饅頭の味、忘れたっ。・・やっぱりお前の饅頭、よこせっ。」

一緒に食べようと渡してくれたお饅頭を、取られそうなったワタシ。

(えっ、やっ、やだっ!)

「大人しく、渡せっ!」

取り合いになったお饅頭を、全部自分の口に押し込むワタシ。

「ああ~、全部口に入れやがったっ!」

んふっ、勝った!

「おいひい。」

満面の笑顔で言うワタシ。

「なんだよっ、その嬉しそうな顔はっ。はぁ~これだからお転婆は困るんだよっ。」

下女には向いてないとか、女らしく振舞えとか、言う藤堂さんだったが
ワタシは一向に気にせず、藤堂さんをにこやかに見ていた。


何日かした夏の昼。
藤堂さん突然呼び出され、ワタシは部屋に向かった。

隊士募集の為、近々江戸に下ると言う。
ワタシも同伴しないかと言われた。

江戸は遠いが、ワタシの気分転換にもなるだろうと。

ワタシはその気遣いが嬉しく、又、有難く思い
受ける事にした。

どうやら、知らない間に、笑顔になっていたらしく
藤堂さんが怪訝そうにワタシを見た。

「べっ、別にお前の為を思ってとかじゃねーしっ、はぁっ、面倒臭せー女だなっ。・・まっ、無愛想よりは良いけど・・。」

準備が出来次第出発するから、用意するように言われた。

「近藤さんと土方さんには、俺から言っとくから。」


あ・・これから許可を取ってくれるんだ。
気に掛けてくれてたんだ・・。

ワタシは心が浮き立つのを抑えきれないでいた。