新撰組黙秘録勿忘草 ~沖田総司~③
ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。
*新撰組黙秘録勿忘草
CV:鈴木達央
道場で素振りをしている沖田さんに
ワタシは夜食を用意して持って行った。
(少し食が落ちた沖田さんに体力を付けてもらわないと)
素振りの手を止めてワタシの作った握り飯を
食べてくれる沖田さん。
(良かった。食べてもらえて)
「不味くは、ありませんね。」
(・・それは、美味しい、と言う事ね。本当、素直じゃないんだから。)
「まだ食べ足りませんね。」
「もう少し作ってきますね。」
「いえ、そちらではありませんよ。僕が食べたいのは握り飯じゃありません。」
手を取って引き寄せられて、耳元で囁かれる
「君が食べたいんですよ。」
慌てて身を引き、彼を見た。
こうなる事は予測出来ただろう。
君は無防備過ぎると沖田さんは言った。
(無防備って、いつも部屋に何かしら持って行くじゃない。どうして今夜だけそんな事を・・)
「なんで・・・違いますっ。そんなつもりで此処に来た訳じゃありませんっ。」
「・・・知りませんよ、そんな事。戯れでも良ければ又口付けてあげましょうか。そうだ、唇ではなく、別の場所でも構いませんよ。」
じりじりと間合いを詰める沖田。
彼の横から逃げるワタシ。
「あははっ、顔が真っ赤だよっ。」
ワタシの行動は男を煽るだけだと言う。
「さぁっ、何処から食べられたいですかっ。言ってみてくださいっ。腕?脚?首?」
扉まで追い詰められた。
「出て行くのなら、早くして下さい。」
ワタシは扉の向こうに慌てて出た。
(どうして、急にあんな事を?)
ワタシは扉の近くで上がった息を整えていた。
「それで、良いんだよ。・・僕なんかに捕まったら駄目だ。じゃ、おやすっ。」
興奮したせいで、咳が止まらない沖田。
扉近くで咳が聞こえたワタシは、扉を開け彼に近づいた。
「ばかだなっ。なんで戻ってきたんですかっ。」
(今はそんな事、どうでも良いじゃない!咳が止まらないと呼吸困難になるからっ。)
外気が冷えたから咳が出ただけだと沖田さんは言った。
そんな顔して、君が暖めてくれるのかと聞く。
「ほら・・おいで・・」
緩く引き寄せられた。
「ほんと・・もう知らないよ。」
苦しげな息の下から言う。
そして甘く口付けされた。
「場所を移動する余裕は無いよ・・抵抗・・しないの?」
「したって良いんですよ。そうしたら僕は諦めるかもしれない。・・・これが僕から逃げる最期の機会かもしれないのに・・。」
・・認めたくない。
認めたくなくて、目を背けてた。
同情ではない感情がある事を。
こんな時にはっきり分るなんて・・。
本当に、貴方が言うように、ワタシは、ばかだ。
「ねぇ・・初めての口付けはどうでした?」
「そんなの・・忘れました・・。」
どんな顔を自分がしてるのか・・考えただけで顔から火が出る。
これで思い出せるかと
さっきよりも深い口付けをされた。
「ねぇ・・僕を思って、身を焦がしたことはあるの?」
「・・ありま・・せん。」
正直に言ってなんて・・あげない。
ワタシも貴方と同じくらい、捻くれてるのかも。
可笑しそうに笑う沖田。
君の初めては僕が奪ってしまえると言った。
「君は随分と素直ですよね。僕を好きな事くらい分かりますよ。」
「でも・・僕は君を好きにはなりませんよ。今回の事だって衝動的なもの・・でしかないですしね。」
それが本心では無い事くらい
もう分ってる。
貴方の側にどれくらい
居ると思ってるの?
「僕は君のものにならないし、君を都合よく扱います。」
ワタシは目を閉じながら
頷いてみせた。
「・・君は僕のものだ。僕だけに従っていれば良いんです。」
僕に覚悟を見せてと言う沖田さん。
「たとえば、そうだな、このまま僕の腕の中で死ねる?ねぇ・・僕に全てを委ねられる程、僕を好きだと言える?」
「ええ、言えます。」
「言葉だけなら何とでも言えますよ。証明して見せて下さい。」
「僕に何をされても、抵抗しないでっ。」
次の瞬間、沖田さんはワタシの首に、手を掛けた。
じわじわ手に力が入る。
ワタシは反射的に沖田さんの手を解こうとした。
ワタシの愛情は見せ掛けなのかと問われた。
「僕が好きだと言うくせに、僕の言う事が聞けないんですから。」
僕の側に居るのだって、近藤さん達に言われたからなんだろうと
言われ、ワタシは哀しくなった。
「違うわっ。どうして信じてくれないのっ。」
信じて欲しかったら、抵抗を止めてごらんと言われた。
(・・分った。好きに・・すれば良い。あっ、そう言えばそれほど力を沖田さんは入れていない。試してる・・試す必要なんて無いのに・・)
ワタシは解こうとした手を止めた。
薄く瞼を上げて彼を見た。
沖田さんは納得したように、手を解いた。
少し首に痕が残った。
泪が滲んだ。
「泣いたって許さない。優しくされたかったら、僕なんて選らばなければ良かったんですよ。」
ワタシを抱き締めながら言った。
「君の身体の隅々に迄、僕の証を。僕が居るって・・"僕が居た"って証を君に残すよ・・」
荒々しく抱く彼に身を任せた。
疲れ果てて彼の胸でまどろんでいた。
「もしかして寝てるの・・本当に、寝た?」
意識はあったけど、起きられないワタシ。
「ねぇ・・本当はもう僕の病気の事、分ってるんでしょう。・・誰にも言わないでね。君と僕、二人だけの秘密なんだから。秘密を守ってくれたら・・そうだな、いつか・・君に言ってあげても良いよ。」
「愛してるって。」
ワタシの髪を梳くようになでながら、沖田さんは言った。
(もう・・それだけで・・十分ですよ・・沖田さん)
ワタシの泪が、彼の胸を濡らした。