新撰組黙秘録勿忘草~近藤 勇~⑤
ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語っています。一部創作があります事をご了承願います。
大人な表現・内容がございます。ご注意願います。
*近藤 勇
CV:井上和彦
その日の夜、仕事で遅くなったワタシは、足早に近藤さんの部屋に向かった。
近藤さんは、約束を守ってちゃんと来てくれたねと熱のはらんだ瞳で出迎えてくれた。
側には虎徹が刀置きに置いてあった。
何故か少し、気になった。
「ああ、気になるのか。良いじゃないかそんな事、すぐに考えられなくなるよ。」
こっちにおいでと、手を引き寄せられ、前のめりになった。
近藤さんが優しく抱き止めた。
「こんなに待ち遠しいと思った夜はないよ。」
近藤さんは、口付けをする時、目を逸らさないでするのが好きだと言った。
(・・いったい、誰と今までそんな風にしてきたの・・)
チリッと胸が痛んだ。
「おいで、優しくしてあげる。お嬢さんはただ、俺に身を委ねていればいい、簡単だろ?」
「君は自分で俺の部屋まで来たんだ。逃がすつもりなどないよ。」
ワタシの肌が赤く染まって、まるで血に濡れた虎徹のような美しさだと、近藤さん言った。
血に濡れた虎徹・・。
そして返り血を浴びた近藤さんを想像して怖くなった。
「刀と比べられて不服か?俺としては最上級の褒め言葉なんだけどね。」
虎徹が嫉妬してるかもしれないと、彼は言った。
ワタシは虎徹を見た。
近藤さんは刀掛けから虎徹を取り、鞘から抜いた。
この輝きを見るとワタシの目を思い出すと言う。
ワタシは月夜に輝いた貴方の瞳が、虎徹と似ていると・・思いました。
「虎徹は俺の命と等しい。その虎徹と同じくらい、君が好きだ。」
ワタシは虎徹を放そうとしない、近藤さんにいじわるを言いたくなった。
「でも・・素直に喜べないわ」と拗ねてみせた。
それでは、普段は決して人には触らせないが、特別に虎徹を触らせてあげようと、言われた。
ワタシはうつ伏せにさせられた。
背中にひやりとした物が、当てられた。
それが虎徹だと分かった。
火照った肌に、虎徹の冷たさが心地よかった。
虎徹の裏表の冷たさを伝えながら
首筋から、うなじ、背中へと口付けを落とす近藤。
ワタシが少し身体をずらそうして動くと
「駄目じゃないか、へたに動くと斬れてしまうよ。そう、じっとして・・」
(嘘だ・・近藤さんはワタシにそんな事はしない。わざとそんな風にして、じらしてる。)
ワタシの熱を虎徹が吸い取り、ワタシと同じ温度になっていった。
近藤さんはワタシを抱きかかえて、自分の前に座らせた。
ワタシは近藤さんの首に手を回した。
虎徹は、ワタシが支えてと言われた。
ずしっと重量感のある虎徹、片手ではとても持てない。
鞘に納まっていない虎徹をそのまま
抱き締めるのはやはり、怖い。
刀身の銀色の光は一層、輝きを増す。
ワタシの胸に顔を埋める彼。
虎徹をワタシは背後に回した。
(ごめんね、虎徹。戦いの時は近藤さんは預けるから、今はワタシに預けて)
虎徹は不満そうに見えたが、そのままワタシの後ろで控えてくれた。
結った自分の髪を解くワタシ。
近藤さんの綺麗な黒髪とワタシの髪とが絡み合う。
近藤さんの黒髪をなでた。
この綺麗な髪に、触れたかった。
(やっぱり、綺麗・・)
ふと顔を上げた近藤さん。
ワタシは自分から、彼に口付けを落とした。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
ふと気付くと、隣に近藤さんが居ない事に気が付いた。
「ん・・近藤さん?」
「起こしてしまったか。寒いか?」
近藤さんは、障子を開け、月を見ていた。
「そんな薄着で、風邪をひいてしまいます。」
「ふっ、それならお嬢さんが寄り添って、暖めてくれないか。こっちにおいで。」
そんな顔で見られたら、断れない。
ワタシは布団から出て、彼の元に寄り添う。
「暖かいな・・暫くこうしていようか。」
彼はワタシが新撰組に来て、何ヶ月経ったのか・・と言った。
新撰組は随分と名を馳せてきた。
俺が、新撰組が切り開いてゆく未来がどんどん開けているのが、分かるよ。
未来は明るいだけのものでは、ないだろうと近藤さん言う。
辛さも厳しさを感じる事も。
そんな思いをしても、守り抜く価値がこの都にも人々にも、時代にも
溢れ帰っているんだと思う。
この時代に生まれた事に感謝していると
ワタシを見て微笑んだ。
なんだろう・・この不安は。
こんなに側にいるのに
遠くにいるような
この不安感は。
「なんて言ってるうちに、この時代があっさりと終焉を迎えてしまったりすると、俺は格好がつかないな。」
近藤さんは軽く笑う。
ワタシは確かに、今は不安定で混沌としているけど、そんなにあっさり
時代が覆されるとは思えなくて・・そんな事を言う近藤さんに驚いた。
「あはは・・そんな驚いた顔をするな。俺は何も間違った事は言ってはしない。・・何事も、始まりがあれば終わりもある。」
この動乱が治まり、平和が京に戻ったら・・時代は変わっているかもしれない。
その時はお互い笑顔で迎えたいと・・。
「こんな風にお嬢さんを抱き締め、体温を感じながら未来を見つけて行きたい。ふふっ」
近藤さんの笑い声が・・風に舞って・・かき消された。
「・・だがそれは、夢物語だ。」
(えっ・・)
「っ、それにしても、冬は良いなぁ。空は澄み渡り、星々はより一層美しく見える。吐く息が白く染まるのも良い。染み入る寒さに身が引き締まって・・覚悟が決まる。」
「何の・・・覚悟・・ですか。」
ワタシは近藤さんの着物の裾を掴んで、小刻みに震えた。
そんなワタシの髪を梳くように、なでながら
「・・・分からないか・・終わりの、覚悟だ。」
目の前を暗闇が襲う。
目の前が暗くなるってこう言う事を言うのだろう。
「言っただろう?何事も、始まりがあれば終わりがある。俺だって例外ではない。俺は何も覚悟もなく、終わりを迎えるつもりはないよ。」
「どん・・な、覚悟です・・。」
聞きたくない。
聞きたくなんてない。
なのに、どうしてこんな事を聞いてしまうのか。
「そうだね、お嬢さんには教えておきたい。」
「俺は自らの命を使う"覚悟"を決めている。何処だか分かるか。」
近藤さんはワタシを強く抱き締め
「只将(ただまさ)に一死をもって君恩(くんおん)に報いん」
(どうして・・どうして、今、それを言うのですか・・・。ワタシ達はさっきお互いの気持ちを交わしたばかりなのに・・どうして)
「その音が、刻々と近づいている音がする。今すぐにではないが、そう遠くでも無いのだろうな。」
「嫌で・・嫌でございます。貴方が居なくなるなんて・・ワタシには・・」
「すまない。だが・・止めてくれるな。俺の"覚悟"は誰にも汚させない。たとえ、お嬢さんの頼みでもそれは無理だ。」
ワタシの言葉は封じられた。
ああ・・この人を止める事は誰にも出来ない。
この瞳を見れば分かる。
月に照らされて銀色に光る、この瞳を見れば。
揺ぎ無い決意なのだと、はっきりと分かる。
この"覚悟"はもう随分と前から、決めていたのだろう。
だから、だから
「逃げるなら、今のうち」
とワタシに言ったのだろう。
自分に何かあったら、ワタシが悲しむ、ワタシが・・一人になってしまうと
心優しい人だから・・情を交わす事を避けたかったのだろう。
「だが、その日が来るまでは・・君を愛そう。虎徹と共に俺の側に居れると良い。自らの幕を引く、その瞬間まで君を愛すると誓うよ。」
強く強く抱き締められて涙が溢れた。
後、どれくらい一緒に、この月を
見られるのでしょう。
ワタシも、その日まで
貴方に寄り添います。
貴方が決めた道であれば、ワタシもまた
同じ道を行きます。
-完-
※只将(ただまさ)に一死をもって君恩(くんおん)に報いん=近藤勇、辞世の句。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆総評◆
わーん、中島号泣(ノ◇≦。)
近藤さんと一緒に居られて、凄く幸せでした。
笑顔で長くいられました。
器の大きな人、という印象です。
父性が強い男性なので、ワタシに沢山の気遣いを見せます。
又、優しい性分なので、凹む事も多いようでした。
近藤さんは刀フェチだったので、ワタシは黒髪フェチで登場させました。
ワタシは初対面のときから、近藤さんの黒髪に惹かれてます。
(近藤さんの長髪と言うのが珍しかった。だいたい短髪で登場するキャラなので。)
風に舞う黒髪を見て、うっとりしていました(笑)
いつか触れてみたいと、密かに思っていたようです。
今回のワタシは、割と大人しめ?でした。
お相手が近藤さんだったせいでしょうか。
あまり前には出ませんでした。
それほど、近藤さんといて安心感があったという事かしらん。
近藤さんが、ワタシと距離を置くようになって
手を重ねる場面で、ワタシは必死で訴えます。
眼差しだけで。
言葉で言っても、きっと近藤さんは拒否すると思いました。
でもあのまま拒否され続けたら、ワタシは屯所を出たと思います。
辛くて居られなかったと思います。
なので必死に思いの丈を、眼差しだけで訴えます。
近藤さんには、伝わったようです。
この場面で話の流れが変わるので
大切にしたかったのです。
あ、あと、夜の散歩の場面は
ワタシの独白が多くなりました^^;
自分から遠ざけようとする近藤さんに
恋する乙女の気持ちをワタシに語ってもらいました。
虎徹と近藤さんとワタシの愛の場面は、すいません・・。
もの言わぬ虎徹は良いとして、近藤さん・・キツ・・。
何度かリピートして聞きましたが、どうも組み体操チックになるので
妄想炸裂でした。あくまで、妄想・・です(-"-;A
虎徹を抱えての情事は、かなり無理があるかと。
虎徹は後ろで控えてもらいました。その時だけは。
日本刀に裸婦・・エロ過ぎます・・。
真剣は私も持った事はありませんが、舞台稽古の時にそれに変わるモノは
持たせてもらった事があります。
それでもかなり重く、振る事さえ難しかったです。
女性が持てるのは小太刀・匕首くらいだと思います。
大太刀を振るう女性の殺陣もありますが、かなり練習が必要だと思います。
そもそも危険だし。
あ、余談でした(^_^;)
井上和彦さんの近藤さん。
私は最期の辞世の句を聞いて、ああ・・これを読んでもらいたくて
キャスティングしたんじゃないのかなと、思いました。
この句は、人生経験のある声優さんが言ってこそ成立するのではないかと
思いました。かなり重い句なので。
全体的に大人で包容力があり凄く素敵でした。
最初の・・
「ご用改めである。手向かいする者は斬り捨てる!」
はぁ~かっこいい・・。
痺れました。はい。
新撰組って滅びの美学なんでしょうか。
凄く美しいんですよね。
全てが悲しくて、美しい。
今回で近藤さん編は終了です。
読んで頂いてありがとうございました!
次回は・・
来月にならないと、分からないんですぅ(><;)
届きましたら、聞き込んでUP致します!
それでは、ごきげんよう