「オレの…初めてのオレの匣兵器!!」
まばゆく光るオレンジの小箱を手に、ツナがつぶやく。目を瞠るとさらにあどけなく見える横顔に、正一は未来の彼を思い出す。同じ様にボンゴレ匣を掌に載せ、微笑んでいた若きボンゴレのボス。
「綱吉君、どうかしたのかい?」
一つでも計算が狂えば世界すら破滅に導きかねない作戦の、要とも言えるアイテムを持っているにしては穏やかな表情に、正一はつい尋ねてしまった。そう、今ここで正一と綱吉が会っていることすら、誰かに知られてしまってはまずい。内心はどうであろうとも、現在は、お互い敵対している組織の幹部とボスという立場にいるのだから。
「ううん。この匣を受け取った時の、みんなの反応はどんななのかなと思って」
愛しげに匣の表面を撫でると、ツナは最強の匣兵器を小さなナップザックに入れ、正一に渡した。一見何の変哲もない布の袋の中には、過去へ託す希望が入っている。それをさらに正一が持参したメッセンジャーバッグの底の方に押し込んで、目的は果たされた。後は何もなかったように別れるだけ。
「山本はいつも通りなんだろうなとか、雲雀さんは興味無い振りして一番興味津津だろうなとか、ランボはおもちゃと間違えそうだなとか」
「そうだね。こどものランボさんなら絶対間違えるね」
つられて正一も苦笑した。初めて会った頃の傍若無人で天真爛漫な雷の守護者なら、きっと何も分からずに悪戯するだろう。笑いながら、正一は焦ってもいた。ツナとの出会いの時間が短いほど、作戦の成功率は高くなる。なのにツナはまだ話しかける。
「きっとお兄さんは『極限に何だ!?』って言うよ。クロームはただ受け取るだろうね。それで獄寺君は……」
笑みが一層深まる。
「獄寺君は、すごく目をキラキラさせて『おお……』って言う。絶対」
「綱吉君、悪いけど……」
「見たいな。みんなの反応」
ツナの顔からすっと笑みが消える。
「それが見られるのは入江さんだけだ。だから教えて。みんなの反応がどうだったか。全部終わった後に」
正一はごくりと喉を鳴らした。無意識に腹に手をやる。
全部終わった後。
過去の綱吉たちをこの時代に呼び寄せ、白蘭を倒した、後。
それがどんなに困難か、ツナも正一も充分に分かっている。目的を果たせず、白蘭の思い通りになる可能性だって、充分にある。それでもツナは言ったのだ。「全部終わった後」と。
「うん。分かった。覚えておくよ。それで絶対教える」
「お願いします。入江さん」
先にここを出て下さいとツナがいい、正一はそれに従った。雲雀君によろしくと正一が言うと、ツナは笑顔で頷いた。きっと会うのはこれが最後だと、二人とも分かっていた。全部終わるまでは。
ボンゴレ匣を手にした際の守護者の反応は、ツナが予言した通りだった。了平は叫び、ランボはサイコロと言い、クロームは匣よりも骸の心配をした。そして獄寺は、ツナの予想と一句違わぬ行動をした。正一はひとつ溜息をつく。
『綱吉君、みんな、君の言った通りの反応だったよ。獄寺君は、本当に目をキラキラさせていたよ。後は君に教えるだけだ』
その道のりがどんなに険しいものでも、君に。
標的229を読んでの妄想です。正ツナっぽくなってしまいましたが獄ツナ前提!!!