一昨日 取り急ぎ展覧会の一報をアップしました。

今日は改めて今回の展覧会の見どころや感想などについて初めての方にも分かりやすくお話ししていきたいと思います。

 

 

ここに集まってきた貴重なジュエリー

高価な宝石や貴金属のように素材そのものに価値があるわけではなく、ともすれば時代の終焉とともに消え去ってしまう運命にあるコスチュームジュエリー。今回この展覧会に展示されている400点余りの作品は 大きな時代のうねりを乗り越えてこの場所に存在しています。当時のデザイナーたちの独創的でゆるぎない美意識の下に作られたコスチュームジュエリーは それらを愛おしみ大切に扱う人々の手によって 数十年の月日を経て 今日 私たちが目にすることができるものとなっているということを 考えさせられる貴重な展覧会ともいえます。

 

 

本展の見どころ

本展は コスチュームジュエリー、ヴェネチアンガラスの収集家であり研究者である小瀧千佐子さんの監修によるもので作品を3つの章に分けて包括的に展示というスタイルになっています。

オートクチュールのために作られた作品、ヨーロッパの職人の個性が光る作品、コスチュームジュエリーが大ブレイクした新世界アメリカの作品。コスチュームジュエリーとひとことで言っても 生まれた場所や背景によってかなり違った意味合いになっています。

それぞれのパートに展示されたジュエリーを観ていくことで その奥深い世界の一部に触れることができます。

 

 

展示室の構成

まず入り口ではポール・ポワレの夜会用マスクとブレスレットをまとったボディーが迎えてくれ、一気に気持ちは1910年代の頃へと移っていきます。

 

第1章は シャネル、ディオール、スキャパレッリなどのオートクチュールのために作られた作品。各メゾンのために優れた技術を持つジュエリー工房がコスチュームジュエリーの製作を手掛け、例えばシャネルには グリポワ工房、ビザンチンスタイルを追求したロベール・ゴッサンス等のジュエリーが展示され、それらの印象もまたガラッと違っています。イブ・サンローラン、バレンシアガなどのジュエリーが見られるのもこのコーナーで、うっとりするようなジュエリーの数々が並ぶ、大変見応えのあるコーナーとなっています。

 

第2章では1920年代から50年代にかけて華麗に開化したヨーロッパのジュエリー工房による作品。素材や様式など個性的な物が目立ちます。ウィーンのシス、イタリアのコッポラ・エ・トッポとともに中でも私が気になったのはフランスの金属鋳造職人の家に生まれたリーン・ヴォ―トランという女性の作品の数々で一点一点手で作られた作品には彼女の独特の世界観が込められていて興味を持ちました。

 

第3章では新世界 アメリカのコスチュームジュエリーの展示。ヨーロッパとは異なり 宝飾文化の歴史を持たないアメリカ人にとって このコスチュームジュエリーは魅力的で大ブレイクとなりました。

ミリアムハスケルを中心にトリファリ、ジョセフオブハリウッドなど 今でも馴染みのあるブランドが並んでいますが、ハスケルの初代デザイナーフランク・ヘスの緻密で繊細な作品、二代目ロバート・クラークの造形的な作品は現代 市場ではほとんど出合えない貴重な物ばかりとなっています。

このコーナーに並べられているアメリカンコスチュームジュエリーはほんの一部にすぎませんが、1940~50年当時の人々がジュエリーを目にした時のわくわく感が伝わってくるような魅力的な展示となっています。

 

ざっと駆け足で展示内容をご紹介してきましたが、展覧会は 10分程度のビデオ鑑賞も含め 一時間少しあれば十分に回ることができます。

 

 

自分の感性を大切に 自由に展示を楽しみましょう

そもそもコスチュームジュエリーは美術品のように鑑賞するという物というよりは むしろ、それらを装いにどのように取り入れるかというところに面白さがあります。

当時の人がどのように身に着けたのか想像するだけでなく、もし興味を引くジュエリーがあったら、自分ならどの服にどうやって組み合わせるか等、こうした観点から観ていくと作品との距離も一気に縮まり、より楽しく観られるのではないかと思います。

きっと全ての作品が同じように全ての人の心に響くわけではなく、人によって感想も様々でしょう。それこそがコスチュームジュエリーの魅力であり、これらを考案、製作した先人たちも21世紀の我々が自由な解釈で楽しむことを願っていると思います。

 

 

デザイナーたちの名言

 

最後に展覧会の図録の帯に印刷されていたデザイナーたちの名言をご紹介したいと思います。有名なものなのでご存じの方も多いでしょうが、これらの言葉はコスチュームジュエリーとファッションの関係を考える時のキーワードになるでしょう。

 

宝石赤「この世でいちばん素晴らしい色は あなたを輝かせる色」 ガブリエル・シャネル

 

宝石赤「私にとってファッションデザインとは 服作りではなくアートである」エルサ・スキャパレッリ

 

宝石赤「醜い女性などいない。そういう女性は、ただ自分を魅力的に見せる方法を知らないだけだ」

クリスチャン・ディオール

 

宝石赤「ファッションは色あせるけれど、スタイルは永遠」 イブ・サンローラン

 

宝石赤「女性は身に着けるものによってエレガントになるのではなく、どのように身に着けるかでエレガントになる」ユベール・ド・ジバンシー

 

 

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