ついにパリが蜂起しました。

1830年7月27日から29日までの3日間は

｢栄光の3日間」と呼ばれています。

バリケードが築かれ、ボワーニュ伯爵夫人も移動するには

バリケードを越えて行かねばなりませんでした。

『回想録』では｢第8部　1830年7月の一週間｣が

日付入りで約60頁にわたって､革命の日々を描いています。
さて、シャルル十世は激動の日々をどう過ごしていたのでしょうか。

7月29日の項には以下のような話が載っています。

グランドゥヴェースが語ってくれたところでは、

前夜、水曜日、王は窓を開けてホイストをなさっていました。

大砲と絶え間ない射撃音がはっきりと聞こえました。

爆発のたびに、埃を取ろうとするときのように、

王はテーブルクロスを軽く指ではじきました。

しかし、その他には今起こっていることを

気にしている様子はありません。

ホイストの勝負はいつも通りに進み、

廷臣の中にはほんのちょっとでも

注意しようとするものはありませんでした。

（中略）

実は、王は神秘思想に心酔し、

ポリニャック氏の手紙に力づけられて、

すべてはこの上なくうまく行くのだと確信していました。

そして、聖母が示されたと

敬虔にも信じている道から逸れようとはしなかったのです＊。

＊サン＝シール校（陸軍士官学校）の総裁であった、

ブロイ伯爵ga

水曜の午後、サン＝クルーに到着しました。

自分が知ったこと、ヴェルサイユを通り抜けながら見たことに

震え上がっていました。

王は辛抱強く耳を傾けて、

長い間安心させようとなさいました。

結局ブロイ伯爵はずっと不安なまま下がろうとしているのを見て、

王はの彼の腕をとって、おっしゃいました。

「ブロイ伯爵よ、あなたは誠実な人だ。

自信を持ちなさい。

ジュール（ポリニャックのこと）はまた今晩聖母を見たのだ。

聖母は辛抱するよう命じ、

すべて最後にはうまく行くと約束されたのだ」

ブロイ伯爵はとても信心深い方なのですが、

このような確信にはあやうくひっくり返りそうになりました。

『雪下のマグマ』ではなかなか感じのよい人物として

登場するポリニャックですが、

「聖母マリアや聖人たちと心の中で会話をした。

自分は王と国民を救う運命なのだと信じ、

殉教の覚悟を決めた」（256頁）と書かれています。

また、ボワーニュ伯爵夫人は、

王がランブイエから出て行こうと決めたのも、

占い師のマルタンに助言されたからだった、

という話をリュクサンブール公爵から聞いた、と書いています。

(Mémoires de la comtesse de Boigne Ⅱ,
Mercure de France, 2008, pp.298-300)

革命なんてへっちゃらさ～『ボワーニュ伯爵夫人の回想録』14