工場ではせんもチヨも恋占い通りに
結婚が決まってしまいます。
親戚の雨清水傳(堤真一)は、
トキを元気づけようと清光院へ連れてゆきます。
そこは怪談「松風」で知られた古刹でした。
相撲取りと恋仲になった遊女松風が
嫉妬に狂った侍に斬り殺された、という伝説の地でした。
松風の血痕が残る古井戸もありました。
キャーと叫びながらも、大喜びのおトキ。
謡曲「松風」を謡うと松風が現れるという
言い伝えを雨清水は伝えます。
その後、ついに雨清水とその妻タエのおかげで
やっとトキの見合いが決まります。
相手は元士族の中村守道という若者でした。
トキの父と祖父はちょんまげに裃で現れて
散切り頭の中村父子を驚かせます。
当時のお見合いは両家の男たちが
対面する場なのでした。
おトキは緊張しまくってからくり人形のように
ガチガチになりながら、お茶を出します。
ほんの一瞬相手を見た若い二人は
お互いに好意を持ちますが…
松風
妄執の刃閃く(やいばひらめく)清光院わが君遠く松風は逝く
松風に
幾歳月潮汲み車廻りしかまつとし聞かばいざ出でたまへ
<その心は> 松風村雨姉妹ゆかりの潮汲み車が廻るように、
幾歳月が廻ってしまったことでしょうか。
あなたを憐れに思って待っている者がいると聞かれたなら、
どうぞ出てきてください。(謡曲『松風』参照)
トキ
ちょんまげと散切り頭のお見合いにからくり人形お茶出しチラリ
トキ
父上は江戸の遺物の士魂にて砕き給ふかわが幸わが未来
父上江戸時代の遺物というべき武士の魂で、
私の幸福、私の未来をぶち壊すおつもりなんですか。



