一年ほど前、
日曜の夜はドラマがひしめいている、と書いた。
今年はというと
8時から「べらぼう」
9時から「御上先生」
10時から「TRUE COLORS」
10時15分から「フォレスト」
10時30分から「ホットスポット」
⒒時から「坂の上の雲」(再放送)
「べらぼう」は初回だけ見て撤退、
「坂の上の雲」は傑作だが1度見たので見ない、
ということで、今年はちょっとましだが、
10時台は激戦だ。
15分ごとに開始時間がずれているのも微妙なところ。
CMを飛ばせるので、
民放の番組は録画して見るべし、
という原則もあって、私は
「TRUE COLORS」をリアルタイムで見てから、
「ホットスポット」を見て、
「フォレスト」は後日にまわしている。
<内容の紹介>
「TRUE COLORS」
ファッション・フォトの世界で
世界に羽ばたこうとしていたやさき、
立花海咲(倉科カナ)は、
眼の難病のため
突然キャリアを諦めねばならなくなる。
海咲は再婚する母への反発から
棄てた故郷、天草に戻ってくるが…
「フォレスト」
幾島楓(比嘉愛未)と一ノ瀬純(岩田剛典)は
同棲して一年になる恋人同士。
二人は愛し合っていたが、
互いに嘘をついていた。
身寄りがないはずの楓の母は
ブランフォレストというホテルグループの社長。
純は自分を「リョウスケ」と呼ぶ母がいた。
「ホットスポット」
山梨のビジネスホテルで働く、
遠藤清美(市川実日子)は
自転車で帰宅中車にはねられるが、
同僚の高橋孝介(角田晃広)に救われる。
高橋は実は宇宙人で、超人的な能力の持ち主だった。
脚本はバカリズムで、
日常のささいな出来事にツッコミを入れるコメディー。
「フォレスト」は比嘉愛未と岩田剛典のW主演ではあるが、
倉科カナ、比嘉愛未、市川実日子という
3女優の三つ巴と見ることは可能だ。
3人とも人気も実力も充分ありながら、
なかなか主演作には恵まれてこなかった。
市川実日子についてはウィキペディアの「ホットスポット」で
「民放の連続ドラマ初主演」と書かれているが、
『À Table!〜歴史のレシピを作ってたべる〜』
(BS松竹東急、放送2023年1月~3月)があった。
第39回ATP賞 ドラマ部門 奨励賞受賞作だ。
(この文章を書くため、ウィキペディアを見ていたら
シーズン2の放送が終わっていることが分かった。
ガックリ)
地上波では初主演、だろう。
「比嘉愛未、主演」で脳内検索をすれば、
「推しの王子様」(2021年)がまず浮かんでくる。
深田恭子の降板により抜擢された、
ピンチヒッターだった。
ゲーム制作会社の社長でもあり、
乙女ゲームが大好きな、
ロマンティックな一面も持つ女性を演じていた。
深田恭子なら、夢みる恭子ちゃんが
社長業にもガンバル、といった感じが
想定されていたのかと思う。
比嘉愛未は仲居から若女将、ナース、刑事、
ナース、医師、スピーチライターと
専門職というイメージが強かったので、
社長業はその延長上で想像できた。
しかし、夢見がちなところはどう演じるのか
という興味で見始めたが、
比嘉の美しさを活かしてうまい演出がなされている、
という印象だった。
だが、代役というのは不本意なところもあったかもしれない。
今回、インタビューで
「フォレスト」を私の代表作にしたい、
という趣旨のことを言っていたのも納得がいく。
市川実日子といえば、
「めがね」や「マザーウォーター」といった
映画でキレイ担当、という印象が強い。
共演が小林聡美やもたいまさこ、ということもあるが、
そもそもどんな個性の強い面々の中に入っても、
庭の一番高い木のような存在感がある。
「レンタネコ」(荻上直子監督 2012年)という主演映画もある。
ちなみにNHK-BSでは何度も「レンタネコ」が放送されている。
(猫の日、2月22日朝の9時半からまたまた放送予定)
私の好きな映画だが、
それほど話題になったわけではないので、
なぜ再放送がこんなに多いのか不思議だ。
テレビドラマでは市川実日子の個性を生かし切れていない
感じを受けることもよくあったが、
『大豆田とわ子と三人の元夫』で演じた、
漫画家志望のかごめ役はこの人でなければ、
と膝を打ちたくなった。
「すいか」以来かも。
「ホットスポット」では、
清美のモノローグがときどき出てくる。
淡々としているようでなかなか味がある。
比嘉愛未は2006年7月NHKの朝ドラのオーディションで
2156人の中からヒロイン役に選ばれた。
その2156人の中に倉科カナもいた。
彼女はオーディションを受け続け、
5回めの挑戦で「ウェルかめ」の主演を勝ちとった。
放送は「どんど晴れ」(比嘉)が2007年4月~9月。
「ウェルかめ」(倉科)が2009年9月~2010年3月。
生年月日も1986年6月14日と1987年⒓月23日、
とやはり比嘉さんの方がちょっと先輩。
同年代の女優は嫌でも競い合わねばならいときがある。
そう考えると、
今期の夜10時台の激突も因縁の対決、といえなくもない。
倉科カナの主演ドラマでよく覚えているのは
「花のズボラ飯」(2012年)だ。
夫が一人暮らしの花は
自分ひとりのために手の込んだ料理は作りたくないが、
最小の努力で少しでも美味しいものを作ろうと工夫を重ねる、
というドラマである。
深夜ドラマの定番と言えるグルメドラマの嚆矢といったところ。
「奪い愛、冬」(2017年)は
俳優全員があまりにもわざとらしいおおげさな演技をしていた。
俳優が芋、じゃなくて大根なのではなく、
そういう演出をする奴がワルいのだ。
いくら倉科カナが出ていても、
耐えきれず、見続けられなかった。
NHKのBSでは
地域発ドラマの佳作に出ていたなと思って調べると
「あったまるユートピア」(2018年)だった。
地域発ドラマはどれも質が高く面白かった。
再スタートして欲しいシリーズである。
こうしてみると「TRUE COLORS」は
倉科カナの代表作になりそうである。
<タイプ別お薦めは>
「TRUE COLORS」は第一線のフォトグラファーが
実は生まれつき色弱で、
さらに錐体ジストロフィーという
難病にかかってしまう、という設定だ。
華やかなキャリアをあきらめて故郷に帰り、
半生を振り返るという、
ストーリーへ流し込むための設定かと思っていた。
第7話になって、
父の死を招いた海難事故の真相が語られる。
父も色弱であったため、
右舷緑と左舷赤の舷灯の区別がつかなかったことが
原因であったろう、と推測される。
色弱だと船舶免許はとれないが、
海咲は自らの経験から、
色弱ではない人との感覚の差を父は計算することで、
船舶免許をとれたのだろうと語る。
ここまできて、
スタート時点の設定はドラマの根幹につながり、
また、ドラマの背景には
色覚への深い理解があるのだと実感できた。
天草の風景が美しい。
倉科さんは天草ではなく、
熊本市内の出身らしい。
だから本当に古里にもどってきたわけではない。
それでも、海咲を演じる倉科カナの顔を見ていると
なんとなく懐かしさを感じてしまう。
深い癒やしを求める人には
「TRUE COLORS」を。
「ホットスポット」は
トーク番組感覚で、
あまり難しいことを考えずに気楽に笑って、
ぐっすり眠って、
月曜日からの一週間に備えたい人に薦められる。
「フォレスト」は
韓国ドラマばりの波瀾万丈のストーリー。
ハラハラ、ドキドキこそドラマの醍醐味、
と思っている人向き。
もちろん、比嘉愛未と岩田剛典という
MBC(Most Beautiful Couple)の
どちらか、または両方が気になる人にも。