今、農業業界にいてよく聞こえてくる話題はもちろんTPPです。大雑把に言って農業業界は反発、それ以外の所は賛成と言うような色分けですが、まあそれはそれとして色々調べてみると、報道や何やらで説明されている要件がやたらに大ざっぱなのではないかと疑問です。
 私は提起された当初は「農業にとって厳しいのは間違いないが、でもまあ仕方ないかな」と考えていました。が、今は「農業がどうとか言うより、そもそも誰が得するの?」と思っています。


 TPP参加については「開国か、鎖国か」と言うような言い回しがよく使われます。仮免総理大臣も「平成の開国」と言っていましたが、こういう言い方で「じゃあ鎖国で」と答える人はそうそういないでしょう。もうこの時点でおかしいのですが、では開国と言っても関税を全世界各国へ完全撤廃するわけではなく、環太平洋諸国の一部です。
 具体的にはシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリ、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの各国であり、中国や韓国は入っていません。またシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリと日本はすでに個別にFTAを締結済みであり、オーストラリアとペルーとは交渉中です。


 要するにあらためて「開国」と言えるような国は少なく(TPP参加の諸外国間でも相互FTAは多い)、また国の経済で見ても日本と比べられる国はアメリカしかなく、物品貿易と言うことを考えるとTPPはほとんどアメリカ単独との締結みたいなものです。


 TPPで輸出産業は儲かると言われますが、本当でしょうか。以前、正月の番組で池上彰がTPPを「自動車VS米」と言っていました。彼のニュース解説はわかりやすいのが話題になっていますが、わかりやすさとはデフォルメであり、このTPPに関するデフォルメは少々行き過ぎです。というか本当に自動車VS米なのだとしたらそれこそTPPの意味がわかりません。
 アメリカの自動車輸入関税は2.5%に過ぎず、もちろんゼロではない以上負担なのは間違いありませんが、それにしても大した事ないように思えます。そしてそれ以上に、日本の各大手自動車メーカーはアメリカ向けの自動車はアメリカで現地生産しています。となると関税など関係ありません。


 だいたい輸出産業は日本においてそれほど斜陽なのでしょうか。昔はむしろ儲けすぎとして叩かれていました。実際、先月出たニュースでは、去年の貿易収支は大幅に伸び、黒字は2.5倍となっています。アジア向けの輸出も大いに伸びていて、輸出産業にこれ以上の支援など必要ないように思えます


 つまりもしかしたら、TPPの目的とは「儲ける」ためではなく農業で「損をする」ために行うのでしょうか。だとしたらまだ意味はわかりますが、それならそうといわなければ不誠実です。
 また、TPPの真の狙いは物品貿易ではなく投資や人的交流(安い労働力の輸入)である、と言う論点もあるようですが普通の新聞やテレビでは言っていない、つまり一般国民向けの広報はしていません。これも不誠実だし、そんなあやふやに「賛成」されて潰されるのではやっていられません。


 で「鎖国」の方、つまり日本農業の関税保護についてですが、そもそも食料自給率で言えば6割ほどの食料はすでに輸入しているのに鎖国も何もないように思いますけど、もう少し詳しくは次のエントリにします。