甘くてきびしい法律

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 先日こんなニュースがありました。


「アレルギー対応」名乗る卵に注意を=根拠なし、健康被害の恐れ―消費者庁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101029-00000044-jij-soci


 「卵アレルギーの人でも大丈夫」などとうたい、インターネットサイトなどで販売されている卵には科学的根拠がなく、アレルギー患者が食べると健康被害が出る恐れがあるとして、消費者庁は29日、注意を呼び掛けるとともに、適切な表示を販売者に指導するよう保健所などに要請した。


 卵アレルギーは食物アレルギーの中で最も患者が多いとされ、アレルギーの人が卵を摂取するとじんましんや呼吸障害などの症状を起こす。卵に含まれる「オボムコイド」などのタンパク質が体の免疫に作用することが原因とみられている。

 消費者庁によると、「アレルギーの原因は臭み。臭みのない当社の卵は大丈夫」「特別に手を掛けて鶏を育てているので心配ない」などと宣伝しているサイトが複数確認された。中には卵1個が100円以上と高価な販売例もあった。


 しかし、同庁が専門家に確認したところ、原因物質の科学的な除去は困難で、反応を抑える仕組みも未解明のため、宣伝を信じて摂取すれば健康被害の恐れがあると指摘されたという。 



 卵アレルギーの原因になる物質は卵の主要成分であって、それは簡単に除去できるものではありません。この事件及びあやしい卵の販売サイトについてはohira_yさんが詳しく取り上げています(有)池田養鶏場の美味もみじ卵 美味さくら卵のサイトがひどい )。


 消費者庁はこれについてはとりあえずは注意を呼びかけるらしいですが、つまりこの手の違反はたいてい、最も目立つところをしょっぴいて「一罰百戒」な運用をされるのが普通です。


 しょっぴく根拠は薬事法景品表示法になるでしょうが、本来はこれらの法律は厳密に解釈すると、現時点でもそうとうの健康食品や健康グッズなどを取り締まることが出来ます
 薬事法の場合は簡単に言うと「医薬品以外のものが人に対して効果・効能を謳うな」という条文があり、そのため健康食品の広告ではたいてい「○○で体がイキイキ!」のようにどうとでも解釈できるような曖昧な文句があるか、あるいは体験談(あくまでこれは個人の体験です)が載っていたり、薬事法避けの対処がされていますが、本当は直接書かずとも誤解を招くような記述もダメで、体験談もダメ(景表法)になっていたはずです。


 本来は厳しく取り締まれるにもかかわらず、かなり直接的な宣伝をしている詐欺的商品であってもなかなか取り締まられないのは保健所や役所の担当者の手が回らないからで、ある意味では業者の飽和攻撃に屈しているような感じです。まあ細かなところまで取り締まりつくすのはそもそも無理でしょうし、そこまでされるのもなんかヤダし、ある程度酷くないのは目こぼしするのも現実的判断として良いでしょう。40キロ制限の道路を43キロで走っててもたいてい大丈夫だし。


 もちろん、けっこう見逃される現実があるとはいえ、守らなくても良いと言っているわけではありません。真面目な大手業者はちゃんと関係法規を遵守し、根拠にも配慮しています。ただこれグチなんですが、ちゃんと守ろうとしたら本当に厳しいです。
 健康食品でいえば特別用途食品とか特定保健用食品と言ったカテゴリがありますが、これの申請は非常に大変です。実はとある米で特別用途食品の申請を検討したことがあるのですが、あきらめました。
 お金はまだしも(20万くらいだっけ)、販売する商品現品の形で申請しなくてはならず、なにより申請してから承認までにかかる時間が半端ないという話で、うちの県ではそもそもこれまでの申請が一件だけ、それが2年ほど前に申請してからまだ承認が下りてこないとか、じゃあ商品を仕立ててもそれを販売まで数年寝かせておかねばならんのかとか、もちろん申請が通るかどうかもわからないし・・・


 では特別用途食品の承認を取らずに販売するかと考えた場合、健康に役立つ商品であるにも関わらずそれに関する事柄を書いて宣伝することはできませんから、営業がものすごく難しい。当たり前ですが、広告も当たり障りなくなってしまい、全然売れませんでした。小規模(大企業から見れば)個人農家にはまず無理なものだと思いました。


 景品表示法や農産物でいえばJAS法も厳しく、米を販売する袋のデザインを検討していた際、例えば「農家直送の美味しいお米」みたいなことを書くのはダメだと指摘されました。「美味しい」は客観的に捉えられる事柄ではないからダメなのだそうです。もっとも今は「美味しい」と表示している食品がたくさんありますが・・・。ちなみに「こだわりの」は良いそうです。こだわるのは生産者の勝手だからです。
 JAS法による農産物の表示はやたらと細かく、裏側の枠の中に表示する事柄は当然、枠そのものの線の種類や太さ、文字の大きさも決まっていて、表示義務違反ってたいていこのような内容とは関係ないものばかりで、しかし違反は違反で困るので表示に関してはお役所で綿密に確認する必要があり、とてもめんどうです。たまに担当者によって言うことが違う場合があり、腹が立ちます。


 さて厳しいっつう話を長々してきましたが、要するにこの厳しさは運用の問題で、法律の体制としては充分整っているわけで、例えば何か悪質な事例が発生したときに「消費者保護!罰則厳しく!」などと声を上げる必要はありません(あげる人がいるかは知らないが)。人手の問題なので、どっちかというともっと保健所に人手と予算を!と言うほうが良いのかも。


 で、これとは違う方向で無理解な人たちもいるわけです。それはホメオパシーの人たちで、今回の騒動で色々なところが声明を出し、色々な場所から厳しい目で見られ、厳しい薬事法の指摘を(今さら)受けたりしていますが、それに関して「厳しすぎる」「(どこやらの)陰謀だ」みたいな話があるわけです。
 確かに厳しいと言えば厳しいんですが、それはちゃんと法規を守っている人の話で、今まで薬事法なんか無視してきた(知らなかったと言っても通らない)分際で何を言うかっつう話です。しかもこれまでは最初の方で書いた甘い運用で助けられてきたわけで、まったく盗人ホメオパしい(まるC ohira_yさん)としか言いようが無い。


 以前、ネット上のニコ生シノドスで阪大の菊池教授が言っていたように、ホメオパシーやアレルギーフリー卵などの詐欺的商材も分を弁えてこっそりやっていればまだ見逃されていたのに、調子に乗ってはいけませんよ。まあホメオパシーは穏健にやっているにはまだしも被害者はあまりでなそうですが、アレルギーフリー卵は直接健康被害に結びつくので悪質です。被害者は確実に出ているはずですが、どうなってるのか、もしかしたら好転反応で片付けられたかなあ。

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