アイガモ農法の問題点

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 最近はあまり聞かないような気がしますが、以前アイガモ農法が話題になったことがありました。
 アイガモ農法とは、田んぼにアイガモを放って雑草を食べさせて、除草剤を使わずとも除草の手間を省くとされる農法です。


 特に私の印象に残っているのはマンガ「夏子の酒」のラストに登場した場面で、有機農法に対する希望みたいな扱いでした。確かにアイガモ農法=有機農法みたいなイメージは一般にあるようですが、実はそうとも限りません。


 私個人の考えでは、アイガモ農法は良くも悪くも観光農法(慣行農法にあらず)です。アグリツーリズムみたいなものを企画するとして、アイガモの田んぼほど楽しく可愛い見ものはそうそうありません。そしてそこで出来た米に興味を持ってもらえることも不思議ではないでしょう。経営戦略としては十分アリだと思います。
 しかし米作りの技術としてアイガモ農法を見ると、・・・?と思ってしまいます。


○ アイガモ農法に使えるアイガモは雛だけ


 普通の田んぼに鴨や椋鳥などが飛来することはよくあります。ではそれらが雑草を食べてくれる益鳥かというと全然そうではなく、むしろ害鳥の類です。
 というのは、成鳥の鴨などは田植え後の田んぼに入ると土を混ぜ返して稲を踏みつぶしたり、雑草はともかく稲まで食べてしまうためで、そういう鳥たちのためにひどいときは田んぼの稲の3分の1くらいが被害を受けてしまうこともあります。


 余談ですが、苗づくりをせずに種籾を田んぼに直接撒いてしまう直播農法においては野鳥の被害はさらに大きいため、鉄粉などで種籾をコーティングしてしまい、それを撒きます。その手間・コストがかなりかかるために、いったん直播を始めても結局苗を移植する農法に戻ってくる農家もいます。


 さて、というわけでアイガモ農法で使われるアイガモは雛ばっかりになるのですが、これがたぶん最大の問題点です。
 単純な話、雛はいつまでも雛ではありませんから、1年あるいは2年ごとに更新しなくてはいけないわけです。なのでアイガモを毎年廃棄しなければならないのです。
 これが本当に大変で、通年で出荷されるわけではない、食肉として飼育されているわけでもないアイガモなんか売れません。なので毎年自分たちで食べたり、知り合いに配ったりしているそうですが、まぁーアイガモ自身はお金にはならないのです。


○アイガモにコストがかかる


 で、アイガモの飼育にお金がかからないならいいのですが、そんなこともありません。
 アイガモは雑草を食べてくれるはずですが、実際には田んぼの雑草だけでおなかいっぱいになってはくれず、それとは別に餌をあげています。
 田んぼから逃げたら困るので、田んぼの周りを囲む柵を設置します。
 恒久的に設置しておける柵ではなく、農業機械を使う必要はありますから、いちいちと取り外し移動します。
 一日中田んぼに入れて放っておけるわけではありません。イヌやイタチなどに捕って食われると困ります。飼育小屋から毎日出勤・退勤です。
 田んぼに水がしっかりないと動けません。


○で、アイガモは役に立つのか


 そこまで手間をかけたアイガモがちゃんときれいに雑草を処理してくれるのかといえばそんなこともなく、気ままに動くアイガモちゃんは結構群れて、田んぼの中をまんべんなく歩くわけではなく、取り残しがあります。そして大きな雑草は食えません。アイガモが取りきれなかった雑草はどうするかといえば、人が探して取ったりします。また、あらかじめ大きな雑草は除草剤を使って叩いておいたり・・・本末転倒です。


 そしてアイガモは、あくまで除草の手助けをしてくれるだけであり、病気や害虫に対しては無力です。なので除草剤を使わなくても殺菌剤や殺虫剤は必要になります。で、それら農薬を使う際はアイガモに影響がないように使わなければなりません。


 それとどこかで「アイガモのフンが肥料になる」という話を聞いたことがありますが、なりません。
 昔の農村には肥だめがありましたが、あれのキモは肥を溜めておくことではなく、溜めておくことでフンを発酵させ堆肥にすることです。発酵してない生フンなんか作物にとっては害で、ゴミです。アイガモのフンも同じで、アイガモ農法の田んぼにはちゃんと施肥が必要です。



 かなりネガティブなことばかり書きましたが、人に見せる農法としては本当に優れていますし、そちらを利用して儲けるモデルが出来れば良いんじゃないかと思います。無登録農薬を使う無農薬農法のような、詐欺的なものとは違います。
 私は割が合わないと思いますが。