こういうのは滅多に見ないんですが、たまにはいいかなと思いまして、前回のエントリに頂いたコメント で紹介された、完全無農薬コシヒカリを販売しているという永伊プロ のウェブページを見てみました。
 ・・・ええ、まあ典型的な内容でした(^^;どこか他所で見た以上のものなど何一つありませんでした。ところでまことにおせっかいなことかもしれませんが、この米 、包装にJAS認証のマークがついていませんが大丈夫ですか?あれって袋の裏でもいいんだったかなー。確かこれの違反は法人で1億円以下の罰金じゃなかったですかねぇ。


 ところでこの手の無農薬を売りにする広告にはよく、田圃内の水生生物の豊かさを示し、写真まで載せている所があります。件のページにも、



農薬のない不耕起の田んぼは、藻類である水面プランクトンにより大量の酸素が発生し、 多様な生態系の生命活動で溢れかえっています。

微生物・小動物・昆虫・貝類・メダカやドジョウ・藻類・水生植物など驚くほど多様な生物が観察できます。

そこへ渡り鳥が沢山飛来し、初夏にはヘイケボタルの輝きが乱舞します。

そのような生命体が活き活きと暮らす田んぼで育ったお米を食べると、人間が持つ本来の生命力・美・健康・エネルギーがよみがえります!



 とあります。ウンカやケラやザリガニなどの害虫については言及しないのはいつも通りのご愛嬌ですが、ところでこういうのを見るとたまに思うんですが、もしかして一般的には、農薬の殺虫剤とか除草剤って一発でそのあたりの雑草や害虫などを全滅させるとでも思われてますか?


 普通、農業の現場で問題になる害虫と言うヤツは、よく目を凝らさないと埃くらいにしか見えないものとか、ゴマみたいな大きさとかそういうのが主で、そしてそんなヨワッチイ生き物であっても何十種類もいて、それぞれ対応する殺虫剤が分かれている・・・つまり害虫によって殺虫剤を選ばないと全然効かなかったりすることもあるわけでして、殺虫剤てのは案外と弱いものです。結局カエルやタニシなんかを殺虫剤で直接殺すなんて相当のことをやらないと無理です。
 殺虫剤が直接、カエルやスズメやらを殺しているなんて誤解は避けていただきたいものです。ただし、ウンカみたいな虫を殺せばそれを食べるほかの昆虫が寄ってこなくなり、んでさらにそれを食べるような小動物も・・・というような食物連鎖的な影響は考えられますが。


 で、一度殺虫剤を使って駆除したら、それらの害虫が全滅して翌年以降はいなくなる・・・というならそんな楽な話は無いのですが、実際には翌年以降も普通に同じくらい発生し、また殺虫剤を使わないと同じくらい被害が出たりします。天候によっては前年以上の虫害が出ることもあります。
 要するに全然、全滅まではしてくれないんですね。んで実際のところ、農薬を使った田んぼであってもカエルやタニシやアメンボやスズメやミミズやなんちゃらは(もちろんウンカやヨコバイやケラやザリガニなんかも)普通にいますし、無農薬の田んぼにだけいるものではないです。さらに言えば、元々そういう生き物がいない田んぼでいきなり無農薬栽培をしても、どっかからタニシなどが湧いて来るわけではないです。


 正直、水棲生物が少なくなった原因としてはコンクリート製の用水路の方が大きいんではないかなと思ったりもするんですが、ではその用水路が悪いかというと、仕事してる側としては圧倒的にコンクリ用水路のほうがいいです。というか今どき土の手掘りの用水路なんてやってられません。・・・とはいえうちが作っている田んぼの半分はそんな土の用水路ですが、水の流れでこけるし上流から土を持ってきて深さを埋めたりもするし、雑草は生えまくるし流れが悪くなると藻が大発生して汚くなるし、何より害虫が増えまくって畦に穴を開けるので水持ちが非常に悪いです。土の用水路で益虫が増えるだけならいいんですが必ず害虫も増えますし、現場の人間としてはどうしても、益虫のメリット<害虫のデメリットになってしまいます。同じように、仮に益虫を殺すことになったとしても殺虫剤は使わざるを得ません。


 余談ですが、ときたま、益虫が増えれば害虫を殺してくれるから殺虫剤なんか無用だという人がいるんですが、もし本当にそうだったら最初っから殺虫剤なんぞ使う人がいるはずありません


 除草剤についても同じことで、ほーんーとーうーに、雑草というやつもなかなか全滅してくれません。誤解を恐れずいうと、雑草を完璧に絶滅してくれる除草剤があればこれほど楽なものはありません。しかしそうは行かないので、毎年草を枯らす羽目になりますし、除草剤では死なない雑草ってのもしょっちゅうありますのでそういうものは手で取ることになります。毎年取ってるのになくなりません。イボクサとか、もう本当に嫌になります。


 殺虫剤や除草剤って、もしかしたら虫や草をきれいに全部殺してくれる代物だと思われているのかもしれませんが、我々はそれを毎年使っている・・・虫や草は毎年出てくる、という事実に実情を見出して欲しいです。
 もっとも、雑草やら何やらを全滅させる方法も無くは無く、ここ何十年かでけっこう流行ってるのですが、田んぼを大規模に埋め立てて駐車場や大型ショッピングモールなどを作れば病気も雑草も害虫も全てきれいサッパリいなくなります。農薬を忌避する人はむしろそっちを攻撃すればいいのにと思います。


 ところで、田んぼが豊かな自然を維持するとか、そういう機能を賛美する人はけっこういらっしゃいますが、私は毎年頻繁にいろんな田んぼを見てきて(中山間地のも、平地のも)、ただの一回も田んぼの生態をフィールドワークする人たちに出会ったことがありません。自然を愛する人たちは普段はどこにいるんでしょうか?