その1
 昔々あるところに、100枚の田んぼでコメを作っている一郎どんがおりました。
 一郎どんは庄屋の農協から言われるままに肥料や農薬を使って、コメを作っていました。
 ある日庄屋の農協は、一郎どんの所に来てこう言いました。
 「今日からコメの値段は1俵7000円にするからな。文句は聞かん。」
 一郎どんはたまげてしまいました。これまでもたいがい酷い値下げをされていましたが、7000円はえらいこっちゃだったのです。
 今まで庄屋どんとしか取り引きしていなかった一郎どんは離農してしまいました。めでたし、めでたし。


その2
 昔々あるところに、100枚の田んぼでコメを作っている二郎どんがおりました。
 二郎どんは非常に理想が高く、全てのコメを有機無農薬栽培で作ろうと思いました。
 二郎どんはある市民団体のセンセイから、農薬を使わずに作物を作ると体質が強くなるから、病気や害虫になんか負けないんだと教わりました。そのため、全ての種籾や田んぼに農薬など一切使わず、田植えをして成長を待ちました。
 二郎どんの田んぼは秋を迎えることなく、いもち病やらウンカやらイネミズやらにやられ、さらに有機肥料でたくましくなった雑草も生い茂り、美味しい不味い以前に食べ物になるコメなど一切収穫することは出来ませんでした。めでたし、めでたし。


その3
 昔々あるところに、100枚の田んぼでコメを作っている三郎どんがおりました。
 三郎どんは非常に理想が高く、全てのコメを有機無農薬栽培で作ろうと思いましたが、近所の二郎どんの失敗を風の噂で聞いていたので、違う方法で取り組もうとしました。
 そこであるひとから、農薬じゃないけど病気や害虫を避けてくれる木酢液や、ニンニクやしょうがの搾り汁、レモン、牛乳などを教えてもらいました。また外国で作られている、天然原料100%の漢方資材も個人輸入して使ってみました。
 ところが不思議なことに、三郎どんの田んぼもけっこう病害虫にやられてしまいました。三郎どんの田んぼはニンニク汁のおかげで食欲をそそるにおいを放っていますが、効果は無かったのでしょうか?
 さらに三郎どんにとって悪いことに、わずかに出荷できたコメから、なぜか日本では使っちゃいけない農薬の成分が検出されてしまいました。どうやら外国から輸入したヤツに入っていたようです。
 三郎どんは刑務所に入ってしまいました。めでたし、めでたし。


その4
 昔々あるところに、田んぼでコメを作っている四郎どんがおりました。 四郎どんは非常に理想が高く、全てのコメを有機無農薬栽培で作ろうと思い、100枚の田んぼでコメ作りをはじめましたが、雑草の処理や水管理が異常に大変で、100枚の田んぼのうち90枚をあきらめてしまいました。
 おかげで、残り10枚の田んぼからは、何とかまともな米を収穫することが出来ました。
 しかし、田んぼを減らしたおかげで収穫出来たコメはせいぜい、100件に満たないくらいのお客さんに売る程度の量でした。多少高くは売れましたが、とてもじゃないけど来年のための機械や資材は買えません。
 四郎どんは平日はサラリーマンになり、コメ作りはやたらお金がかかる趣味になってしまいました。めでたし、めでたし。


その5
 昔々あるところに、100枚の田んぼでコメを作っている五郎どんがおりました。
 五郎どんは農薬や肥料のことを勉強し、別に庄屋の農協どんの言うとおりに農薬を使わなくてもコメは作れることがわかりました。肥料だって有機肥料を使ってみました。
 適正に農薬を使うコメ作りをしたおかげで、五郎どんは収量も品質もそれなりに満足の行く仕事が出来ました。
 ところが面白くないのは庄屋の農協どんです。自分の言うことを聞かずに、それでも問題なく仕事をしているように見える五郎どんを非常に目障りに感じました。なので庄屋の農協どんは、五郎どんが収穫したコメを乾燥調整する順番をほかの百姓よりもうんと後にするように決めました。また、わざといろんな情報を流さないようにしたり、借金の申し込みに応じないようにしたりしました。
 さらに、町人の人々は無農薬のコメが大好きだったので、農薬についてよくわかんないまま悪口をドンドンと言い出しました。
 五郎どんはどうしたらいいのだろうかと頭を抱えてしまいました。めでたし、めでたし。


その6
 昔々あるところに、100枚の田んぼでコメを作っている六郎どんがおりました。
 六郎どんは知恵者で、自分が持っている田んぼ100枚のうち3枚だけを有機無農薬栽培でつくり、残りの97枚は全てごく普通の慣行栽培でつくりました。そして、たった3枚の有機栽培米をコンクールに出したり、テレビに出したりしてたくさん宣伝しました。
 六郎どんが作るコメはまたたく間に評判が良くなり、慣行栽培米も飛ぶように売れました。
 六郎どんはお金持ちになりましたが、周囲からはちょっとせこいかもなーと思われてしまう羽目になりました。めでたし、めでたし。



 続編もいっぱいできそうだ(笑
 その4はおそらく唯一のハッピーエンド?ですかね。


koume