※ジクロルボスやメタミドホスなどが食品に残留していることについての考察は、当ブログの過去のエントリ「中国製ギョーザからメタミドホス その1~15」にまとめてあり、今回の件についても特にそれに付け加えることはありません。もし残留農薬について何か知りたいという方がおられましたら、「食品事故問題」カテゴリの過去記事http://ameblo.jp/vin/theme-10008713721.html をお読み下さい。



 中国から輸入した冷凍いんげんから高濃度の農薬成分(くどいが、農薬ではない)のジクロルボスが検出されたという件が広くニュースになっています。


ニチレイ、輸入した中国産冷凍いんげんに殺虫剤
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-34318420081015



 [東京 15日 ロイター] ニチレイ(2871.T: 株価, ニュース, レポート)は15日、連結子会社ニチレイフーズが輸入した中国産冷凍いんげんから殺虫剤が検出されたと発表した。連結業績に与える影響は現在精査中で、判明し次第発表する。


 ニチレイフーズの発表によると、このいんげんを食べた顧客にしびれなどの症状がでたため検査したところ、基準値を超える殺虫剤ジクロルボスが検出された。ニチレイフーズは該当商品を回収する。なお、ニチレイフーズが確認したところ、冷凍インゲンの農場や工場などの製造過程でジクロルボス使用の記録はなかった。



 今、このエントリを書くにあたってニュースをぐぐり、このロイター発のもの以外の検索結果もあったんですが、例えば毎日新聞なんかだと見出しからしていきなり「農薬:中国産冷凍インゲンから基準の3万倍 女性一時入院 - 毎日jp ...」 と来てますから、ちょっと見てみる気はしなかったです(^^;農薬じゃないっつうに。まあ農薬と農薬成分の違いは新聞の担当記者にしてみればどうでもいいことなのかもしれませんが、それって私に言わせれば「毎日新聞と朝日新聞なんか似たようなもんだし、同じに扱おうがどうでもいい」くらいの意味ですからね。まあ、「だったら本当に似たようなもんじゃないか。例えになってないぞ」という突っ込みは期待しています。

 ただ、この記事を読んで知りたいことがあるとすれば、ニチレイフーズが輸入したのは「中国産いんげん」なのか「中国産冷凍いんげん」なのかです。この二つにどういう違いがあるのかというと、中国産いんげんは農産物ですが、中国産冷凍いんげんは加工品です。要は原料の形で入ってきているのか製品の形で入ってきているのかの違いです。


 というわけで新聞記事ではなく、厚労省のウェブページを見てみました。



厚生労働省発表 平成20年10月15日
中国産冷凍いんげんからの農薬の検出について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1015-1.html


1 今般、八王子市保健所より、中国産冷凍いんげんについて、異味、異臭(石油臭)がし、舌のしびれとむかつきがあったとの苦情があり、保健所においても異臭を確認したため、八王子警察署に通報するとともに、東京都健康安全研究センターにおいて苦情品の残品について残留農薬の分析を実施した結果、農薬ジクロルボスが6,900ppm検出された旨の報告がありました(ただし、未開封の同一ロット品については検出限界(0.1ppm)以下)。
※別紙1(PDF:410KB)のとおり東京都、別紙2(PDF:406KB)のとおり八王子市において公表。


2 本件に関しては、輸入者からの報告によると、他に同様な苦情はなく、現時点では、関係機関が捜査中ですが、念のため、本日、下記の製品について、次の対応をとったところです。


(1)国民に対し、家庭に保管されている当該製品を摂食しないよう、注意を喚起すること。
(2)関係地方自治体を通じて輸入者及び販売者に対し、原因が判明するまでの間、当該製品の販売を見合わせるよう、指示すること。
(3)各地方自治体に対し、同様の事案が発生した場合には、直ちに報告するよう、要請すること。
(4)検疫所に対し、当該製品の製造者(Yantai Beihai Foodstuff Co.,Ltd.)からのすべての食品の輸入手続を保留すること。

特に、(1)については、国民に対する周知に報道機関各位の御協力をよろしくお願いします。


<製品概要>
製   品:冷凍食品「いんげん」(250g)
輸 入 者:株式会社ニチレイフーズ 東京都中央区築地6-19-20
原 産 国:中華人民共和国
賞味期限:2010.1.7


そ の 他:当該製品は株式会社イトーヨーカ堂及びその系列店舗においてのみ販売されていますが、既にその販売は中止されているとの情報を得ています。


<輸入実績>
製造者(Yantai Beihai Foodstuff Co.,Ltd.)からの冷凍いんげんの輸入量
36 件、265,160.8 Kg(平成19年10月15日~平成20年10月14日)


【参考】
ジクロルボス(別名:DDVP)

有機リン系化合物であり、国内では、農薬(殺虫剤)、動物用医薬品、家庭用殺虫剤、自治体や防除業者による防疫用殺虫剤として使用されています

リスク評価の状況としては、一日摂取許容量(ADI)※1が平成8年に厚生労働省の食品衛生調査会において評価され、0.0033mg/kg体重/日が設定されています。また、米国環境保護庁(EPA)においては、急性参照量(ARfD)※2として0.008mg/kg体重/日が設定されています(わが国では未設定)。


※1:一日摂取許容量(ADI)
ヒトが毎日一生食べ続けても健康に悪影響が生じないと推定される量。


※2:急性参照量(ARfD)
ヒトの24時間又はそれより短時間の経口摂取により健康に悪影響を示さないと推定される量。

本件のジクロルボスが6,900ppm検出された冷凍いんげんを、体重60kgの人が約0.07g摂食すると、急性参照量に達する。


(食品安全委員会ホームページを参考に作成)



 どうも、製造者(Yantai Beihai Foodstuff Co.,Ltd.)とか書いてあることからして、加工品を輸入しているようですね。であれば中国産冷凍いんげんではなく、正確には「中国冷凍いんげん」と書くべきだと思いますが。

 ついでに細かいことですが、国内では、農薬(殺虫剤)、動物用医薬品、家庭用殺虫剤、自治体や防除業者による防疫用殺虫剤として使用されていますと書くくせに、なぜいんげんに残留していたのは「農薬」ジクロルボスなのか。「家庭用殺虫剤」ジクロルボスではない根拠は何だ


 さて先日来、中国製の粉ミルクからメラミン(断じて、メラニンではない)が検出されたりと、ほんまにどうなっとんじゃと言いたい気持ちはわかります。私は以前から、近年は中国産の農産物の品質も生産にかかわるコンプライアンス遵守も向上しているので、巷で騒がれているほどの心配は要らないとよく言っていたんですが、そのこと自体は今でも間違いとは思いませんが、しかし説得力は無いだろうなと自分でも思います。
 だいたい、ギョーザ事件があって1年も経たないうちからこれはあんまりに酷い。まあ、製造者の不手際とかではなくて悪意を持った故意犯だとしたらどんな状況だって考えられるわけですが。


 しかし、事故米騒動の時もそうでしたが、マスコミ等で騒がれる対策とやらはいつも、検査体制の強化だとか輸入禁止とか、なんだか対症的なものばかりです。もっと突っ込んだ、本質的なレベルでの話は出来ないんでしょうか。
 マスコミ等が語る対策とはどれも、結局は、発生した事故に対してそれをどう見つけるか、そして隠すか、あるいは揉み消すかという話に過ぎません。重要なのは、事故自体を減らすにはどうすればいいかです。つまり大事なのは、ジクロルボスを発見できる体制ではなく、いかにジクロルボスを残留させないかです。どんなに警察組織が優秀な国でも犯罪件数をゼロに出来ないように、少数のアイテムに高濃度の危険物質を故意に添加する犯罪者に対してはいかなる検査体制でも対応しつくすのは不可能です。


 日本の商社は中国の農場で技術指導したり法遵守を徹底させたりといった努力をしているのですが、そんなことを評価せずにただあやふやな表現でニュースを出しておいて中国産の農産物の評価を落とし続けたら、努力している方も「もうやーめた」になります。


 実は一連の食品事故は全て加工品によって起こっていて、どれにも「農産物」は絡んでいません。新聞各社はそのことに気づいていますか?ブドウにボルドー液をかけている映像を撮ってきても何の意味もありませんよ。


koume