先日、イオンが調達コストの低減を目的として、農産物を生産者から直接仕入れるようにすると発表しました。それでなくとも元々農業業界では、何年か前からとみに、生産者から消費者へ直接販売しようとする人が少なからずおり、うちも米の3割ほどは直販です(ブログからも受付は可能です・・・これは宣伝)。


 農産物の場合は鮮度がものを言うし、近年は特に「生産者の顔が見えれば安心」というよくわからない風潮がありますので直販はもてはやされていますが、ところが一般的には、直販と言うのは必ずしも低コストになりません


 単純な話ですが、うちの場合は顧客に米を配達する際は運賃が実費でおよそ700円ほどかかります。が、スーパーで同量の米を買うとしても、小売価格のうち輸送コストが700円も占めていることなどありえず、桁が違います。
 もちろんこの場合の直販と、イオンが直販するのとでは意味合いが違いますが(生産者直販の立場からすると、イオンですら一種の中間業者だし)、それでもイオンが一件一件の生産者から仕入れるのと1次卸からまとめて仕入れるのでは、中間にかかるコストは(品物一つ一つに均せば)まとめて仕入れるほうが明らかに安くなります。


 こんなことはほとんど常識であって、本気で「中間業者を廃した方が安くなるんだ」と主張しているのはタチの悪いマルチ商法のディストリビュータくらいでしょうが、さてイオンの場合は本当に調達コストが安くなっているのでしょうか。


 もちろん、「調達コスト本体は高くなっているが、それ以外の面(例えば、安心関連に使えるネタが増えるとか)でメリットがあり、トータルコストは低くなる」事はありえます。ならばまだ良心的な話ですが、それ以外にもいくつかシチュエーションは考えられます。


 まずありそうなのは、生産者が輸送コストを被ってしまうことです。はっきり言って農業業界で一番立場が弱いのは生産者です。「運賃はそっち(生産者)もちでしょ?」と平気な顔で要求してくる業者は山ほどいますし、イオンくらい強大なシェアと価格影響力を持つ企業の要求は並みの強制力ではありません。もちろん、そんなの嫌だと断ることも出来るのですが、業者としては「あっそう、なら他所を探すから」で終わってしまい、交渉も何もあったものではありません。


 もう一つ可能性としては、ほんとのほんとに調達コストが安くなってしまうこともありえなくはないです。つまり農協や市場がけっこう大きいマージンを取ってたかもしれないことです。ただし、私は実際のところは中間業者がどれほどのマージンを取っているかは知りません。知りませんが、JAは農家から非常に馬鹿馬鹿しい名目のコストをあっけらかんと取っています。例えば、JAの米集荷場(農家がJAに出す米を持っていくところ)からJAの貯蔵倉庫までの輸送費とか。何でそんなもん農家が払うねん(笑


 私は別に、直販がいけないと言っているわけではありません。メリットがあれば、どんどんやればいいです。ただ、大前提的に、中間業者を無くせば安くなるとする話には注意が必要だと言うことと、もし本当に中間業者を廃しただけで低コスト化になるのであれば中間業者は猛省すべきだということです。
 もし今後、イオンの野菜が安くなったとしたら、それは直接取引きで安くなったという言い訳の影で単に生産者が泣いているだけかもしれません。そうでないかもしれませんが、つまりわからないと言うことです。


koume