北國新聞 8月17日朝刊より



 帝王切開、出産の女性死亡 医師の過失有無争点
 福島地裁 20日判決


 福島県立大野病院で二〇〇四年、帝王切開手術で出産した女性=当時(二九)=が大量出血して死亡した事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(四〇)の判決が二十日、福島地裁(鈴木信行裁判長)である。検察側は「医師として過失は重大」としたが、弁護側は「大量出血は予見不可能で処置は適切だった」と無罪を訴えており、主張は真っ向から対立している。


 手術時の判断をめぐり、執刀医の刑事責任が問われた裁判は医療界に大きな波紋を呼んだ。被告の措置は「過失」か「通常の医療行為」か。地裁の判断が注目される。


 最大の争点は、被告が帝王切開後に「癒着胎盤」を子宮からはく離した際、大量出血を予見できたかと処置を続けたことの是非だ。


 検察側は「はく離を続ければ命に危険が及ぶと予見できたのに漫然と継続した」と強調。はく離をやめ、子宮摘出で大量出血を防げたとして、禁固一年、罰金十万円を求刑した。


 弁護側は継続措置について、「医療現場での医師の裁量として合理的かつ適切」と反論。子宮摘出は非現実的と批判した。


 起訴状などによると、加藤被告は〇四年一二月一七日、楢葉町の女性の帝王切開を担当。女児が生まれた後、胎盤が子宮に癒着していたのにはがし続け、失血死させた。また、医師の義務に反し、異常死として二十四時間以内に警察に届け出なかった。




 「産科医療のこれから」 を見ると、同様の記事は他にも出ていますが私は地元紙のを挙げておきます。 この記事は時事通信のもの とほとんど同様ですが、最後の一文は北國の記者が付け加えたんでしょうか。この辺の仕組みはよくわかりません。


 さて8月20日はもうすぐですが、そんなタイミングで出すには異様にこなれていない認識の記事でガックリです。確かに医療界の注目度はすごいのですが、マスコミ様はいちいちそれに乗っかろうとせずとも興味がないならほうっておいて、判決が出てから、無罪ならば手のひらを返すなり、万が一有罪なら日本医療をぶっ潰すなりなんなりすれば良いのに、何かすっごい変な感じです。


 別に、大野事件の件についてマスコミがもっと医療業界の味方をしろとか(今さら)言っているわけではありません。未だにこれかよ、と言うのはこういう部分です。


> 最大の争点は、被告が帝王切開後に「癒着胎盤」を子宮からはく離した際、大量出血を予見できたかと処置を続けたことの是非だ。


 争点は、癒着胎盤そのものを予見できたかどうかであって、癒着胎盤が判明したならそれを剥がして大量出血することは予見も何もなく当然でしょう。で、癒着胎盤は剥がし始めてからやっと判明するのであって、仮にそのまま処置を続けないとしたら、胎盤は一部だけ剥がれて出血しているままに子宮を取れという事になり、だから医学的に非常識といっているのです。
 つまりこの記事を書いた記者は「最大の争点」であるはずの基本中の基本すら誤認しているか、またはこちらの方がありそうですが、検察のトンデモな主張のみを取り上げて一方的に紹介しているのです。


 またこの記事においては、最後の一文がいかにも検察の主張に対して援護射撃的で、医師法21条をめぐる様々な議論も微妙な扱いもまるで無視した内容になっています。そもそも公判も終わって、そのほとんど全てがネット上のさまざまなところで公開されているにもかかわらず、未だに起訴状を元にして物をぬかすあたり、やはり勉強不足なのではなくてわざとやっているんでしょうか。


 まあ、今こんな記事を出すと言うことは、マスコミとしては無罪が出ても手のひらを返すことなんてしないよという宣言なのでしょう。数日前にこんなことを書いておいて、無罪だったからと言って大野事件において失われた産科医療がどうとか影響がどうとか、それについて検察を批判するとか、できるはずがありません。これは今後も医療叩きに血道を上げていくよとの宣言でしょう。そうとしか受け取れません。


 だから、放っておけばいいというのに。


koume