先日に続き中西先生の雑感を読んで。ちなみに最近突然中西先生の文章を引用し始めていますが、つい最近読み始めたわけではなくて、かなり前からよく読ませていただいています。
雑感440-2008.8.4「リスクテイクしている国は成長している-平成20年度経済財政白書-」
A. リスクテイクしない国 日本
2008年7月22日、平成20年度経済財政白書が発表された。その内容をひとことで言えば、日本企業(家計も)は概してリスクテイクが低く、それでは経済成長は望めないということ。リスクに対する強靱な対応能力が必要で、日本型経営の良さもあるのだが、日本型経営方針を貫き、安定的に収益上げている大企業は、経営に成功しているように見えるが、収益性は高くない、適切なマネジメントの下で、リスクを積極的に取っていくことが収益性を高め、成長機会を大きくすると結論付けている(中西は、3章のうち、第2章しか読んでいないが)。
(中略)
別のリスクだが
この解析にどういう問題があるかについては、詳しくは分からない。ただ、同じようなことが、私が扱っているリスク(有害性と関係する健康や環境リスク、地球環境リスクなどだが、ここでは企業経営リスクと区別するために、環境リスクとしておく)に対する日本企業の態度にも見られる。同じだと思ったので、やや長く引用したのである。
企業(事業者)がやたらと環境リスクに怖じ気づくのである。リスクがあってもいいではないかというのではない。リスクがあるかないか未だ分からない段階で、調べようとせずに、ただ、そこから逃げようとする。また、環境リスクの大きさが小さいことが分かっていても、評判が悪くなると大変だからという理由で、逃げようとする。こういう態度が非常に見られ、これでは、新規技術の競争では、とても勝てないなと思うのである。
リスクを逃げるという前に、自分でリスクの判断ができないことも大きな問題である。これも、新規技術開発競争では致命的である。新しいリスクの場合には、まだ規制はないので、自分で調べ、ある程度自分で判断し、それを国民や行政機関や、或いは国際社会で説明しなければならない。ところが、それができない。国が基準値を決めるまで、他国が基準値を決めるまで待とうとする。ここで、決定的に遅れてしまう。
この場合も、やはりリスクテイク、つまり、自分で判断する、自分で説明するというリスクをとらないとイノベータにはなれないとつくづく考える。
ものすごくよく実感できる話ですが、企業がリスクを判断しない(出来ないわけがない)のは企業のせいなのでしょうか。
たぶん企業がリスク判断しないのは、顧客の方がリスクマネージメントに疎すぎるからです。「企業(事業者)がやたらと環境リスクに怖じ気づくのである。リスクがあってもいいではないかというのではない。リスクがあるかないか未だ分からない段階で、調べようとせずに、ただ、そこから逃げようとする。」と言う言葉は、企業と言うよりもむしろ消費者と当てはめるともっとしっくり来るでしょう。
しかし、では企業は悪くないのかと言えばそんなことはなく、消費者のそんな嗜好に当て込んで、ありもしないノーリスク幻想を抱かせるような製品開発(と言うか宣伝)を行っていることこそ、責められることでしょう。企業は経営的に、正しい環境リスクを算定することが出来ないのです。してしまうと商品のウリが無くなるので。
では企業が本物のリスクマネージメント的な認識を正直に伝えることは不可能なのかと言うと、もちろん理屈の上では可能でしょうが、現実的には大きな障害があります。
悲しいことに現在、先に書いたように、ちゃんとしたリスク判断をすること自体がリスクになってしまう現実があります。が、いち企業がこのリスクを負って環境リスク学の普及を図っても、その恩恵を受けるのはその企業だけにとどまらずに、同じ業界のほかのライバル企業も等しく恩恵にあずかることになります。部外者からしてみれば全く素晴らしいことではありますが、本人たちの割には合わないでしょう。つまり国や他国が基準値を決めるのを待っているのではなく、他の企業でも誰でも良いから自分以外の他者が決めているのを待っているだけです。
ようは志の高い企業があればいいだけの話なのかもしれませんが、悪貨は良貨を駆逐すると言う話もあり(サプリ業界なんか悪貨しかない)、まあ世の中の企業の志がみんな低いとまでは思いませんが目だって高いところもないようで、英雄みたいな企業がポッと出てくることはちょっと想像しにくいですね。
もっとも、英雄企業にもメリットがないわけではなく、わかっている人にとってはその企業に対するイメージアップの効果くらいは望めそうですが、それがメリットと思える人がどれほどいるのかと言うと・・・それって実際は相当大きなメリットだと思いますけどね。
では誰が消費者に対してリスクマネージメントの考え方を教えるべきなのか・・・。
そんなもん本当は、個々の消費者が自分で勉強すればいいんですよ。企業がちゃんとしたリスク判断をすることがインセンティブになる社会の方が健全です。わけのわからん無駄カネも減りますよ。
koume