私は、医療問題は非医療者が主体となって取り組まなければならないと、偉そうにも言っています。医療問題で困るのは医療関係者ではなく患者と患者予備軍(つまり普通の人たち)だからです。
 もちろん日本医療がアメリカ型やイギリス型などに移行したらそれはそれで医師たちも困るのでしょうが、おそらく今ほどは困らないでしょう。医師たちが最高に困っているのは今現在であって、しかし医師を辞めてしまえば個人的には困らなくなってしまう。医師たちは医療崩壊が進んだ方が有利なくらいです。ところが患者はこのままでは将来、ハンパじゃなく困るようになる。だから医療問題には非医療者こそ取り組まねばならないのです。


 ところで私はまず間違いなく断言しますが、医師のブログが無ければ今に至っても医療問題になど興味を持っていなかったはずです。
 私がブログのエントリで初めて医療問題のことを書いたのは2006年12月です。医療体制の崩壊 というエントリは、ほとんどYosyan先生のブログのコピペみたいなもので、当時は「新小児科医のつぶやき」とNATROM先生、モトケン先生のブログをじろじろ読んでいました。たぶん2週間かそこら読んで、あれを書いたと思います。
 最近は新聞やテレビでもときたま、医療問題を紹介しますが、私は一応毎日ちゃんと新聞を読んでいますけどそれでも元々医療問題に興味があるから医療記事も読むのであって、もし興味がなければスルーするかあるいは誤読していると思います。医療ブログを読んでいなかったとして、それでも新聞情報から医療問題に興味を持っていたかもとは考えられません。そういう人がいないともいえませんけど、少なくとも私はです。


 医療問題は非医療者が取り組まねば、といっても医療問題そのものを知らなければ取り組むことは不可能です。しかし医療問題について一番詳しいのは医師に決まっています。そういうわけで、医療体制に問題があるよと世間に知らしめるのは医師の義務と言ってもいいかもしれません
 もちろん、その義務が果たされていないというつもりはありません。医療ブログがこれだけ普及し、様々に活発な議論が行われ、ブログ活動から新しい医師の組織や運動まで巻き起こり・・・と充分な活動はあったと思います。最近ではテレビや新聞でも医療を取り上げていると書きましたが、そもそもそれらが取り上げ始めたのも医療ブログの影響力があったかもしれないと思うほどです。


 なので極端なことをいえば、医療問題について医師たちが果たすべき義務はもうすでに終わったと言えるかもしれません。それ以後現在まで続いている医師たちの行動はいわば好意で支援してくれているのであって、しかし義務といえるものはすでに医療現場から非医療者のほうへ移ってきていて、今は私たちこそが取り組まねばならない問題に変化しているのです。
 そんな意味で、県立柏原病院の小児科を守る会 はやはり評価されるべき活動ですし、それを追いかける活動がもっとあって欲しいと思うものです。


 さて、では農業問題を考えた時に、同じように「農業問題も、非農業者が取り組まねばならない」といえるのでしょうか。ということは、消費者は生産者より困るのでしょうか。
 農業問題の場合は事情が変わって、生産者と消費者の間にそれほど大きな差はありません。普通、医師-患者の関係にはかなり非対称性がありますが、専業農家といえども相当量の食べ物は買うしかないわけで、つまり農業問題は生産者だって同じくらい困ることになります。


 まあ誰が主体になるべきかはとりあえず置くとしても、段階としてはまず農業者から農業問題に関する情報が発信されているかです。医療問題で考えた例では、これは農業者の義務です。ところがなんとなくですが、農業者からの発信は充分とは言えないのではないかと感じます。
 もっともそういうブログなどを知らないだけかもしれませんが、知り合いの百姓と話しても時たま愚痴が出ることはありますが基本的にはほとんどみんなのんびりしたものですし、危機感がある方の人でもあくまでも業界内での話に収まっていて、外部に積極的に情報を出そうという人まではそうそういないように見えます。
 農業問題の発信に関しては、農業者以外の研究者や、マスコミなどに先行されている気がします。


 なぜそうなっているかを考えればいくつか理由は浮かびますが、もっとも単純には農業者自身がそれほど困っていると実感していないことです。なぜ困っていないかは、そもそも医療者と農業者のおつむの出来がまるで違うからてーのがもっとも実もふたも無いところですが、もしかしたら問題の方がまだそれほど進行していないからという可能性もあります。
 ここで私はハタと悩んでしまったのですが、農業問題といわれる問題は本当に存在しているのでしょうか。いや、理屈の上では農業がやばいとは知っています。きっと上手に説明も出来ますが、どうしても自分の中で本気の危機感とかが湧いてきません。まあそれは、私だけかもしれませんが、しかし私の周囲にはまだ、農業問題を真剣に討論できる人や雰囲気は存在していません。あるところにはあるのでしょうか。もちろん、あればそれでいいのですが。


 少なくとも私の知る限り、農業問題を外部に真剣に発信する農業者はほとんどいません。ということはどうなるかというと、マスコミ自身による報道に手をゆだねることになるわけですが、先に医療問題の件で説明したようにマスコミ報道のみで農業問題をちゃんと理解する人が現れるか怪しいものです。
 実際にマスコミが扱う農業問題というのも曖昧で、問題点が掴みきれていないものばかりです。当然それは農業者側が情報を出していないから、ってのもありますけどそれだけではないことは昨今のいつまでたってもこなれない医療報道を見ればわかります。


 例えば先日のTVタックルでもありましたが、最近農業問題を取り上げようとするとすぐに食の安全の問題と自給率の問題をやります。が、この2つは相反するとまではいいませんがお互いに無関係ではありえない問題です。しかしどんな報道を見ても、完璧な安全と完全な自給を求めるものばかりです。理想論は結構なのですが、現実に根ざした議論などほとんど見られません。


 もっとも何度か言うように、それは農業者自身が自分たちの義務をいまだ果たしていないからそうなっているんだろうと思います。では、農業者たちが今の医師ブログのように緩やかなコミュニティを作って情報を発信するようになるのでしょうか。それに関してはかなり怪しいと思います。なんか他人事のように言っていますが。
 もし医師ブログが無かったら、日本医療は誰にも知られること無く独居老人のようにいつの間にか終焉を迎えていたかもしれません。今は一応、そうはなっていません。日本農業は独居老人になる可能性大です。


koume