今さらながら農業・食品10大ニュースでも考えてみたんですが、一つのインパクトが強くてほかのは全然思い浮かびません。全農の米仮渡し金7000円ショックです。あ、次点がありました。世界的な穀物高騰。
それ以外には食品関係では、もちろん賞味期限等の偽装問題がありましたが、あれはあくまでコンプライアンスの問題なのであって、食品業界で起きた問題ではあっても食品の問題ではないというのが私の認識です。
さて仮渡し7000円問題は、各JAがけっこう全農の意向を無視して独自な対策をしたところもあったり、あまりの反発の酷さに結局のところは全農側が通達を取り下げて後払いを出したりしましたが、それに対する怨嗟の声は今でも農家から消えていません。これは当たり前の話ですが、つまり全農は仮渡しが7000円でも農家はやっていけると考えているという事を示したからです。
最近、財政諮問会議などいくつかの財界人集団が、経済的な視点のみで(しかもたいていは、金持ち企業のみを主軸に置いた視点のみで)様々な分野に対して意見を出したりしていますが、そういう素人集団が「米は7000円でもやっていけるだろう」と考える事はまだ理解出来ます。もちろん、どえらい影響力を(何故か)もっている立場の人たちですから、ちゃんと勉強してから発言して欲しいものですが、素人だからという言い訳は10%くらいは酌んでもいいかなと考えます。
ところが全農は明らかにプロです。本来は米流通・経済のプロ中のプロであり、現場についても精通しているはずの全農が、米の仮渡しは7000円でも農家はやりくりできると考えているのは衝撃でした。このニュースを初めて新聞で読んだ時、思わずあっと声が出ましたし、これは大変な事になる、と感じました。実際、その後の米業界の反応ぶりは相当凄まじいものがありました。
結局取り下げたとはいえ、全農は今でも、仮渡しは7000円でも大丈夫だと考えている事は間違いありません。今年以降、またいつ何時言い出すかわかりませんし、7000円をさらに下回ってくる可能性もあります。農業を辞めた人、農業は続けるがJA系統に米を出すのは辞めた人はかなり多いと聞いています。
農業人口は黙っていても減っています。何しろ、主要な現役メンバーが60~70歳台という世界ですし、若手の流入も限りなく少ないので、衰退はもう目に見えて起こっています。
そこに加えて、果たしてどこを見ているのか訳のわからない農政と、現場に無茶を押し付けるだけのコストカットが最近猛威を振るっています。
農業は継続的な事業です。中断されると従事者が持つノウハウが失われる、という事もありますがもっと直接的に、土壌自体が、1年放っておいただけで手のつけられない状態になる事も珍しくなく、復活させるには大変な時間と資金が必要です。
そこへ持ってきて、訳のわからぬ安全農法だとか低コスト農法だとかを声高に主張する人が多いのは何なんでしょうか。減農薬を元にした安全な農法は、低コスト農法には真っ向から対立します。もちろん、農薬をたくさん使えばいいというわけではなく、適切に使うことが重要で、そういう点ではJAが小規模兼業農家向けにやっている営農指導は典型的な高コスト農法ですが、それはまあ話がずれるのでやめておきます。
海外では安く出来ているから、日本でも出来るはずなどという根拠の無い低コスト押し付けはやめるべきです。米が1万円以下で無いと国際競争力がつかないと言う人たちのことです。それは別の言葉で言うと、例えば東南アジアでは1食あたり数十~数百円で摂る事が出来るので、日本の飲食店も1食の価格を100円程度にすべきとか、日本の労働者も中国本土の労働者並みの低賃金にしないと競争力がつかないと言っているのと同じです。御手洗富士夫のキヤノンは従業員の給料を5000円に出来るのでしょうか?
私に言わせれば、低コスト農業をやるには、まず農薬や化学物質に関するリスクマネジメントを徹底的に普及させ、ちゃんとした化学知識を共有する事が第一です。そうすれば、農薬に関わるコストは多少改善され、適切な肥料・農薬使用に拠った効率の良い生産ができるようになります。食品の不安ばかり煽っておいて、低コスト農業をやらせようとしても100年かかっても無理に決まっています。
冒頭で、穀物の高騰といいました。一般的には、穀物の価格が高くなったとしか認識されていません。しかし実際には、国際流通量が減っているからこそ価格が上がっているのです。高くなるだけなら、高いお金を出せば買えますが、物がなくなってしまえばいくらお金を出しても買えなくなります。もともと地球規模で見れば、全人口に対して食料の生産量は不足しています。
今後数年の食糧事情は相当変わったことになる可能性があります。2007年はその節目の年だったかもしれません。
koume