ドラゴンランス 魂の戦争 第三部 消えた月の竜(D&D スーパーファンタジー)
マーガレット・ワイス, トレーシー・ヒックマン, 安田 均
「ドラゴンランス」シリーズは世界最初のロールプレイングゲームであるD&Dを下敷きにした、マーガレット・ワイスとトレイシー・ヒックマンの筆によるファンタジー小説です。最近で言えば「指輪物語」のようなもの、といえば通りがいいでしょう。ただし指輪物語はほとんど古典といえるほどの扱いですがドラゴンランスはもうちょっと新しいです。
D&Dを下敷きにした作品としては、非常に面白かったコンピュータRPGの「バルダーズ・ゲート(完全版) 」などがありますが、BGはフォーゴトン・レルムという世界での物語なのに対し、ドラゴンランスはクリンという世界での話になります。D&Dにはもともと背景世界がなく、名も知れぬ洞窟を探索するゲームだったのですが、トラベラーなど詳細な背景世界を持つゲームが現れ始めたのを機にD&Dでも追加要素的に世界が作られ、フォーゴトン・レルムやクリンはそのうちの一つというわけです。
ドラゴンランスの日本版は20年前から刊行され、最初のシリーズは「ドラゴンランス戦記
」といいます。文庫で全6巻になっていて、翻訳は安田均です。RPGファンでこの人の名前を知らない人はモグリだというほどの有名人です。
この戦記では、最初の方ではいかにもゲームを下書きにしていると思える表現が見られるのですが、途中からはまさに壮大なスケールを持った面白いファンタジー小説として読めます。もちろんゲームから完全に離れているわけではないのですが、そういうことを感じさせない一個の物語としてしっかり成り立っているということです。 ただしドラゴンランス戦記はそれ単独として一応完結はしているものの、謎が多く残り、明らかに続編に続くような結末でした。というわけで続いたのが「ドラゴンランス伝説
」です。こちらも全6巻で、私はこの伝説は名作だと思っています。
戦記には何人も印象的なキャラクターが登場するのですが、中でも最も謎に包まれ、そしておそらく最強のキャラクターに魔術師のレイストリンというのがいるのですが、伝説ではこのレイストリンと双子の兄のキャラモンを中心とした物語となります。スケールはいっそう大きくなり、タイム・トラベルの魔法を駆使して時空を越えてクリンの歴史にまで携わるものとなっています。ラストは感動的で、大部の長編にふさわしいものとなっています。
またドラゴンランスには外伝もあり、こちらは「ドラゴンランス英雄伝 」として出版されていました。こちらの方はワイス&ヒックマン以外のメンバーの手による作品も含まれ、やはり全6巻の短編集となっています。戦記と伝説はハードカバー版となって再出版されていますが、英雄伝のほうは再販されておらず、そのうちの一部が「ドラゴンランス セカンドジェネレーション 」となって2冊のハードカバーにまとめられています。
文庫のドラゴンランスとしては、英雄伝が6冊出版された後に「ドラゴンランス序曲 」というシリーズが、ワイス&ヒックマン以外の筆者から出ていましたが、こちらは日本語版は未完(途中まではある)となっていて、たぶん現在ではドラゴンランス史からは除かれたものになっていると思います。正当なドラゴンランスシリーズから見て矛盾した設定などもあり、省みられることもあまりないようなので。
さてストーリーとしてはドラゴンランス伝説でしっかり完結していて、少なくとも日本では10年くらい音沙汰なかった作品なのですが、前述のハードカバー版がアスキーから発売され始め、さらに新作の「ドラゴンランス 夏の炎の竜 」が出始めました。前作で活躍した人物たちの次の世代がメインの話になり、もちろん旧世代の人物も登場します。
伝説からの伏線は(少ししか)ない、ストーリー的には全くの新作として始まった作品ですが、個人的には、美しくこの世界を去った○○が復活してしまうのがちょっとなぁ、って感じでした(^^;もっともランスでこいつがいないのは魅力が半減してしまうのも確かなのですが・・・
この夏の炎の竜も、ちゃんと完結します。
んが、人気作品の業というか、やはりまた続編が出てしまうのでした。それが、「ドラゴンランス 魂の戦争 」です。全3部作で、第1部が3冊もあったので全部で9冊になるかも、だったのですが第2部と3部は分厚い1冊になったので全5冊となりました。2部と3部はたぶん鈍器として使用可能です。
夏の炎の竜にしても魂の戦争にしても、面白いことは間違いなく面白いです。しかしやはり、ちゃんと完結した作品からつなげる事に多少の無理はあるのですね。まあ、そういうおかしさはむしろ少ないほうだと思うのですが、やっぱりちょっと変です。特に夏の炎の竜のラストが気に入った人は、魂の戦争にてなんで○○がここに?という思いを最後まで捨てきれないでしょう。キャラクターはほとんど世代交代し、たしか戦記からは60年か70年ほど経った世界です。魂の戦争では、魔法が余り活躍しない(というか設定上、ほとんどの魔法が封じられている)のが残念なところです。
魂の戦争最終巻はついこの間刊行され、「伝説」の時も「夏の炎の竜」の時もそうでしたが、これでドラゴンランスは完結ということになっています。日本版だけで言えば、20年の集大成です。もしかしたらまだ続きがあるかも、と怯えながらも、本の帯についていた「さよなら、ドラゴンランス」という言葉には感慨深いものがあります。長い付き合いでしたから。
私は戦記と伝説は今でもたまに読み返します。中学生のころに買った本はほとんど、今読み返す価値のないつまらないものばかりですが、ドラゴンランスだけは別に感じます。古本屋で文庫を探せばまだあるかと思うので、戦記と伝説は本当にお勧めです。
koume
